サピエンス勝利の歴史と危機:認知革命

サピエンス勝利の歴史と危機:認知革命

 およそ20万年前にアフリカ西部に現れたサピエンスは、7万年前に起こった「認知革命」により勝利の歴史へと進む。認知革命の歴史は、本書のユニークで興味深い部分であり、我々の未来を考えるために重要な内容であると思う。

認知革命の本質は何か

動物・鳥・魚は生きるために、食べ物を求めて陸・空・海・川を移動する。20万年前に出現サピエンスも、他の動物と同じく食料を求めてアフリカ大陸を移動した。一介の動物に過ぎなかったサピエンスに、なぜ認知革命が起こったのかは今も謎である。

 認知革命の本質、すなわち、サピエンスが他のホモ族や動物と異なる点は、ことばを使って情報を伝える能力だった。情報を共有できると、食料を求めて移動する仲間と協力して敵と戦える。サピエンスは三種類の情報を伝える能力を得た。�ー�囲の状況(食べ物・危険など)�▲汽團┘鵐梗匆颪両霾鵝壁袖ぁηタ院�出産等)、�L椶妨�えない情報(スピリット・国家・権利等)である。この中で、�,和召寮己�にも共通し、�△和召離曠眤欧籠以�もできる。��はサピエンスの特技である。

 チンパンジーの集団は150匹が限度。一方、サピエンスは、未知の人間と協力し集団を無限に拡大できる。農業革命以降における集団は、数十人から数百人、数千人、数万人へと拡大した。集団は規模に関係なくエンパイアー(帝国)と呼ばれ、独裁者(一人か数人)が支配する。エンパイアーは、戦争によって併合され大きな国家へと進む。

サピエンスによる他のホモ族の消滅

 およそ200万年前から1万年前まで、地球上には5−6種類のホモ族が存在した。共通点は、�ゝ霏腓頁召鉢�二本の下肢で直立して歩くこと。巨大な脳は思考や言語によるコミュニケーションを可能にした。歩くために不要となった上肢は、道具を作り使うことができる。火の使用(200万年前)は、料理や身の安全を守るなど大きな効果があった。

 近年のDNA研究によると、現在まで生存している人類のほとんど全てが、サピエンス族であることがわかった。アフリカを出たサピエンスが、アラビア半島に移住してから急増した。半面、他のホモ族が消滅したのはなぜか。

 サピエンスが他の種族を制した最大の理由は、コミュニケーションによって大きな集団の形成し、協力体制を確立した社会的能力であった。インドネシアに到達した集団は船を造り、オーストラリア大陸の他に、無数の島々を移動した。商人たちは、コミュニケーションによって海の経済圏をまわり、遠い島々の人たちと信頼関係を築いて貿易したという。

 サピエンスの人口増加は、他のホモ族と交配(interbreeding)したのではなく、他の種族に換った(replacement)という説が有力である。

サピエンスによるエコシステムの破壊

 アフリカ大陸を出たサピエンスは、陸続きのユーラシア大陸へ、そして最北のシベリアから北と南アメリカ大陸へ、南は東南アジアへ。東南アジアでは船で島々を移動し、オーストラリア大陸に到達した。驚くべきことは、これまで気候の変動で死滅したとされた恐竜や、巨大動物は、全てサピエンスの到来と共に消えているという。

 すなわち、巨大動物の絶滅は、気候の変動よりも、団結したサピエンスの狩猟が原因らしい。他のエコシステムの破壊は押して知るべし。サピエンス勝利の歴史は、認知革命の時代に始まった第一次エコシステムの破壊、農業革命時代の第二次破壊、科学革命時代の第三次破壊へと、今日まで続いている。

おわりに:自然と共存する「裕福な社会」への郷愁

 科学革命では更なるエコシステム破壊が進み、人々は物質的な豊かさの中で孤独で心を病む。著者は、サピエンスが食料を採集した時代の「裕福な社会」を再考している。木の実や植物の採集と狩猟の生活では、仲間は多くても十数人だ。外部の人間と何か月も出会わないので、感染病が広がることはない。

 雑食によって栄養はバランスしている。食料を求める移動はよい運動となり、夜はよく眠る。採集できない日は、休養し家族や仲間と語り合う。適度な食料や移動によって、人口の増加は限定的である。著者は、これこそが真の裕福な社会でないかと問う。

サピエンス勝利の歴史と危機:農業革命 へ続く

 

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