第3回 サピエンス勝利の歴史と危機(その3)農業革命

第3回 サピエンス勝利の歴史と危機(その3)農業革命

はしがき

 チンパンジーと同じ祖先から600万年前に分かれた人類(ホモ族)は、他の動物と変わりなかった。しかしながら、立つ・脳の発達などの進化を続けて、250万年前には道具(石器)を使うようになる。200万年前に出現したホモ族・サピエンスは、他のホモ族と同じくアフリカ大陸で生活していた。ところが7万年前に認知革命が起こったサピエンスは、アフリカ大陸を出て移動し、気候が適した地域では定住して農業を営むようになった。

農業革命の歴史

 農業革命は、およそ一万年前にトルコやイランなどユーラシア大陸の西部に始まった。サピエンスは、すでにユーラシア大陸だけでなく、オーストラリアやアメリカ大陸に移動していた。農業革命は農業に適した中東以外の中国・中南米で起こったが、シベリアやオーストラリアでは不可能だった。

 農地と家を所有して定住すると、雨風をしのぎ、野生動物の危険を避けることができる。

一方、種まきから収穫までは休むひまがない。収穫は、害虫はもちろん、日照りや雨量など気候に左右される。また、近隣の農業者による侵入と戦いが絶えず、多数の死者が出た。

 移動から定住へ、農業革命は急激な人口増加と農地をめぐる争いをもたらした。家と農地を守るために必要なコミュニティは、村から町へ、都市国家へと発達。やがて、世界の四大文明が発祥し、今日の高度な文明技術社会へと発展していく。

農業革命に始まる現代社会の闇

 サピエンスは、農業革命によって幸福になったのか。チンパンジーとの分離を600万年前、道具を使ったホモ族の出現を250万年前として、農業革命一万年の歴史はあまりに短い。歴史の長さから見て、人間本来の姿は採集・狩猟であり、今も人間の遺伝子に刻まれていると思われる。

 著者は、農業革命がもたらした過剰労働と人口増加、それによる問題点を浮き彫りにしている。すなわち、狭い土地に定住し変化のない毎日、穀物偏重による病気、度重なる戦争と死者など。農業革命による国家の発達、続く工業革命により高度な技術が発達した現代社会で、農業革命と同じ問題が続いているのはなぜか。

おわりに

農業革命について著者は、広大な変化に富む自然の恵みを得て、自由な時間が多かった採集・狩猟時代の方が、幸せだったのではないかと問う。農業革命を輝かしい人類史の起点とする歴史観とは大きく異なる視点である。

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