学術セミナー第9回:AIがことばを話す!小学校英語をめぐる論争

学術セミナー第9回:AIがことばを話す!小学校英語をめぐる論争

 

はしがき

戦後の外国語教育政策は約10年ごとに変革されたが、四技能の習得は明治時代から一貫した目標だった。注目すべきは、外国語指導助手(ALT)の参加(1987)である。導入から33年目を迎える令和2年(2020)には、全公立小学校で必須科目となる。

今ではAIがディ―プ・ラーニング(自ら考える)によってどんなことばもできる。AIがことばを話せるのは、先生が教える「エキスパート・システム」から、自らが考え学ぶ「ディープラーニング」へ飛躍したからである。

小学校英語を推進した政治力

 小学校英語は、戦後の英語教育全体の流れの中で、取り立てて論争されなかった。これを本流とするなら、新しい流れが生まれた。それは、『「英語が使える日本人」の育成のための戦略構想の策定について (2002.3発表) に至った言語教育政策策定の流れだった。

新しい流れに押された本流は、大きなうねりとなり、公立小学校における英語教育必須化が実現した。公立小学校は私立小学校の100倍あり、全国津々浦々に散在している。

なぜ英語が公用語でない日本で、脳が発達過程にあり、認知能力が未熟な小学生が、高度なシンボルである外国語を学ぶのか。日本の教育・生活環境などを考慮した教授法や、長期的な実証研究は見当たらない。

小学校英語の政策は脳の内部が暗黒の時代に検討され、理論と実践によっては検証できない状態が続いていた。すなわち、小学校英語を推進した潮流は、学問的な根拠ではなく政治力だった。

小学校英語の論争

 論争は小学校の新しい学習指導要領(2002年度)の発表に始まった。きっかけは、慶応義塾大学における公開シンポジウム「小学校での英語教育をめぐって」(2003.12)。参加者による論文集の中に興味深い一節がある。

(引用)このうねりは、産業界からの強い要請、一般の人々の根強い英語願望(あこがれ)、英語の商品力に着目した英語産業の強力な後押し、さらには、大学などにおける英語教員のポストの確保を狙う(中略)・・・文部科学省の思惑などが複合的に作用して形成されたものです。(大津由紀雄(2004)「公立小学校での英語教育」大津由紀雄編著『小学校での英語教育は必要か』 慶応義塾大学出版会45-80.)。

 懐疑的な意見を述べるなら職を失う危険がある。勇気ある見識者による論争は、論理的で反対意見が多い。支持する意見は少数派で科学的な根拠にかけている。

おわりに

 小学校英語が法律によって必須科目になってから、反対意見は影をひそめた。同じ頃、AIによることばの研究が急進し、AIがことばを話すようになった。それはAIの画像研究からわかった脳の仕組みを応用したからである。今こそ、論争ではなく「AIの証言」に耳を傾けよう。物云えぬ子どもたちの健全な脳の発達のために、そして日本の明るい未来のために。 [KK.HISAMA, 2020.3]

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