学術セミナー第8回:AIがことばを話す!「英語教育<大>論争」とは

学術セミナー第8回:AIがことばを話す!「英語教育<大>論争」とは

 

はしがき

第一回東京オリンピックから10年後に「英語教育<大>論争」が勃発し、国家的な論争に発展した。平泉・渡部論争は、稀にみる教養の持ち主で勇気ある政治家と、開国以来の伝統を守る教育者が命をかけた応酬だったと思う。

「英語教育<大>論争」の争点は何か

戦後のGHQによる政策(1945)は、すべての学校における英語教育を目標とした。しかし、教員の不足などで、英語は中学校からの選択科目となった。その後、英語が試験科目にされ、読解・和訳中心の「使えない英語」の時代となる。グローバル化が現実となったオリンピック頃から、国民の間で英語教育に対する不満が高まった。

その中で、参議院議員・平泉(ひらいずみ) (わたる)(自民党政府調査会・国際文化交流特別委員会)が、「外国語教育の現状と改革の方向・一つの試案」1974.4)を提出した。試案は、六項目の英語教育の改善案で、制度の改革(選択制や入試からの除外など)が中心だった。

 翌月の雑誌『諸君!』(文藝春秋1975.4)が、渡部昇一(上智大学教授)の「亡国の『英語教育改革試案』」を掲載した。平泉案に真っ向から反対する論文は二万語を超える。翌五月号に平泉の反論、翌々月は渡部、次は平泉と続いた。

論争後の教育政策と尾を引く外国語教育論争

論争後の新しい教育政策では、外国語学習の目標は「コミュニケーションを図る資質・能力を育成すること」。小・中学校の指導要領は、四技能の中で「コミュニケーション」能力を強調している。過去の政策と大きく違う点は、JETプログラム(1987)による外国語指導助手の導入だった。

指導助手が参加する「コミュニケーション」は、日常会話レベルに終り、訳読による教養など渡部が主張する外国語教育の伝統は失われた。これは世界の客観的テスト(TOEFLなど)に反映され、日本はアジアで最低レベルとなった。

 県と市の学校関係者は、そろって「(英語は)ALTが教えるから大丈夫」という。一方、ALTのブログを読むと、莫大な税金を使って効果のない教育に文句を云わない国民や、サンタに扮して学校回りをする授業を批判している。日本人による論争は、著書や論文、ブログなど、今日まで尾を引いている。

結 語:AI時代におけるJETの役割

JETプログラムは33年目(2019)、参加者は75カ国から7万人以上となった。今は民間会社・他の雇用の総数は、一年間で2万人に達する(2010年の比率:JET45%・他=55%)。地方自治体が負担する費用の一年間の総額は、概算で1100億円を超える。

過去30余年の国際交流と文化理解におけるJETの貢献は大きい。しかし、英語力の悪化はなぜか。 肥大したJETプログラムは大きな転換期を迎えている。次回は2002年からの「小学校英語教育論争」を述べる。[KK.HISAMA, 2020.2] 

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