学術セミナー 第7回:AIがことばを話す! 明治時代に始まった小学校英語とは

学術セミナー 第7回:AIがことばを話す! 明治時代に始まった小学校英語とは

 

はじめに

第一回東京オリンピックの年に渡米し、そこで三○年生活した私にとって、日本と世界の変化に驚くばかり。当時の米国は、すでに高速道路やインフラ、車は一人一台という時代だった。日本人が同じ物質文化を享受してから数十年は経っている。

残念ながら、日本人の英語はそれほど変っていない。その中で小学生の英語が必須科目となることは一大変革である。義務化される小学生と、困惑する小学校教員の悩みは想像を逸する。

小学校の教科である以上、外国語も中学校の英語教師や外国人が代用できない教育原理がある。小学校英語の基本を形成したとされる明治時代の外国語教育を調べてみよう。

第一次グローバル化と日本の外国語教育

 世界のグローバル化は大航海時代(15世紀末−18世紀末)に始まった。徳川幕府は鎖国政策によって欧米の列強による植民地化から日本を守ろうとした。そこで起こったのがフェートン事件(1808.10)である。パニックになった徳川幕府は、すぐに藩士の英語教育が始めた。それから60年後の明治元年に、日本の小学校英語教育が始まったのである。

 英語教育の歴史研究者・江利川春雄は、明治時代の後半は「小学校英語教育のダイナミックな確立期で、その後の小学校英語の基本を形成した」という。元祖は明治元年に開校した徳川兵学校附属小学校で(生徒は78歳から18歳までが4段階)、明治3年から3級に英・仏の初歩を教えた。  

 第2期・明治19-23(1886-23)は、初代文部大臣・森有礼によって高等小学校の教科に「英語」が加設された。教授法は週33時間で、発音と文法が重視されていたようだ。

3期・明治24-331891-1900)は「英語」が「外国語」に改められ、発音と文法に加えて「訳読セジメンコトを要す」としている。しかし、圧倒的多数の小学校で外国語は全く教えられなかった。

4期・明治34401889-1907)と第5期・明治41−大正7(1908-1918)でも、「英語ハ発音より始メ」「常ニ実用ヲ主トシ」など、実用英語を教えた。

明治時代の小学校英語をめぐる問題

 教員が音声から始まる外国語教育ができない! 明治時代から今日まで一貫する深刻な問題である。英語教育の祖・岡倉三郎は、自分が小学校英語を教授しながら反対の立場をとっている。

(引用)「其(小学校英語の)の成績は今日までまだ見るべき占を出したことはない。して見れば理論上より見ても、又実際の結果から見ても、小学校に英語科を置くことの無益なる次第がわかる・・・」

 岡倉は、外国語教育は国語の知識が確立してから進める方が妥当だと云う。なぜなら国語が根底にあってこそ、外国語の効果が大きいからだ。次回に続く。[KK.HISAMA ,2020.1]

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