第6回 英語公用語化について:小学校英語必須化を目前に(その2)

第6回 英語公用語化について:小学校英語必須化を目前に(その2)

はしがき

水村美苗は「彼ら(憂国者)と手をとりあって泣きたいほど」の憂国者だが、英語の必須化や公用語化に反対し、日本の国益を担う人材を育てる学校教育を提案している。しかし、著書が出版された2008年、公用語化と一体の小学校英語の必須化が法律となった。

発端は、小渕恵三総理(1999-2001)のもとに開催された「21世紀日本の構想」を話しあう有識者の懇親会。翌年提出された報告書は、英語を公用語とする初代文部大臣・森有礼の「英語採用論」が元祖と言われる。

新世紀におけるAIの発達から学ぶ

人間の脳の働きを人工的に行うAIの研究は、20世紀の半ばに始まった。一方、インターネットは1980年代から。携帯電話からメール(第1,2世代)へ、今世紀になって急速に発達し、3,4世代を経て現在(第5世代)に至る。AIはことばの四技能はおろか、自主的に考えるディープラーニングができる。

人工知能の発達は、脳の深い部分の働きを解明する画像研究による成果である。大切な事は、無限の記憶力をもち感情のない人工知能と人間の違いである。人工知能と比較して人間の記憶量は極度に小さい。その上、ことばの記憶も感情に支配され、他の生物と同じく身の安全を優先する。不安があると記憶されず、不要な記憶は消去される。

すなわち、人間も古い脳の働きによって我が身を守るために必要な事柄が記憶に残る。それは、古い脳で始まる神経回路の遺伝子が変化する深い記憶である。ことばの学習では、脳の発達が未熟な子どもほど、生活の中で学ばない、生活に不要な外国語は消去される。

街の英語教室と一線を画す学校教育において、音声言語は四技能をバランスする基礎である。関係者は、英語を母語とする小学生が、どれほど苦労して四技能を学ぶかを知っているのだろうか。小学校教員の専門性を問わないのだろうか。

結 語

高度に発達した象形文字を母語とする全日本人が、音声を基礎とするロマンス系の外国語を習得して、「国民総バイリンガル」になるなど不可能である。今こそ、AI の急速な発展を支えた脳神経学の研究から学び、中学校からの英語教育を充実すべきである。

 小学校英語の必須化(5,6年生)から十数年経つが、教育現場では「やりとり」「スモールトーク」を大義としている。自主学習ができる中学生なら、正しい教育によって半年で可能な学習に、小学生は国語の四技能を発達させる重要な4年間も費やす。

小学校英語必須化は、画像研究が脳の深い部分まで解明される以前に考えたこと。時代にそぐわない法律を改正し、子どもたちが「知らぬがOO」の道を歩まぬよう切に願う。[KK.HISAMA, 2019.10]

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