第3回 スベシャルレポート ファーマーズ・マーケットから

第3回 スベシャルレポート ファーマーズ・マーケットから

 

はじめに

 今年も、日本の猛暑を逃れて涼しいアメリカの大学町にやってきた。七月は寒いくらいだったが、八月に入ってようやく暖かい。土曜日の朝、電話が鳴った。

「今日はファーマーズ・マーケットがあるわ・・・」隣の州に住む娘の元気な声が聞こえた。

急いで身支度をして近くのマーケットに出かけた。買い物だけでなく、土地の人との交流が楽しい。

ファーマーズ・マーケット(FM)とは

 野菜が育つ春から晩秋まで、近隣の生産者が週一回都心にやってくるマーケット。日本の道の駅のように、新鮮な野菜、果物、肉、魚、きのこ、木の実だけでなく、焼き立てのパンやデザートも並ぶ。屋台のようなレストランでは、南米、アジア、中東の味が楽しめる。

 ベンダー(生産者・売り手)は、働きざかりの若い人が多い。客は健康志向の野菜食の人を中心に、食文化を大切にするグルメが多い。ベンダーと客の会話だけでなく、顧客同志の会話がはずむ。

その日の買い物は、野菜を主に、アーモンドミルク(ラベンダーの香り)、ピータパン・チップとガゼボ豆のディップ。憧れのラムチョップもあった。

FMコミュニティの交流

いつもミュージシャンが得意の楽器を演奏している。大抵は聞き流して歩くが、女性ヴァイオリニストのメロディが聞こえた。すぐ前で、二・三歩ほど歩くベビーが身動きもしないで聞き入っている。

「ハ−イ」と声をかけると、私を見てにっこりと笑う。

「ミュージシャンになるの」と聞くと、澄んだ青い目が私を見つめる。

帰り際に、一ドル紙幣をベビーに渡して、ヴァイオリンのケースを指さした。小さい手にお札を持ってケースの中に入れた。ほめられると、恥ずかしそうにお母さんの太ももに顔をつけた。

コメント

日本でも、ベビーは話しかけると皆うれしそうだ。成長するにつれ「他人」を意識し、無関心になる。私の経験から、日米文化の最大の違いは他者との言語コミュニケーションだ。

乗客が静かで、眠れる電車は本当にありがたい。他者を思いやる日本文化は、尊重すべきであり、無理に変える必要もない。数万年かけた民族の文化は、彼らの土地柄にふさわしい生活の知恵であり、急に変わるはずがないからだ。

言語コミュニケーションを最大の目標とする英語教育が、過去40年間進歩しない根本的な理由かもしれない。[KK.HISAMA,2019.8]

©2015 athena international research institute.