読書コーナー(令和元年度)

読書コーナー(令和元年度)

第3回 改めて『万葉集』をよみとる(その2)

 

万葉集(ビギナーズ・クラシック日本の古典)角川書店編、2019.443版)70619

はしがき

新しい元号の発表直前に出版されたが、初版は平成13年で18年前。学校教育で教わって以来、初めてひもとく人も理解できるやさしい万葉集である。「生老病死」四苦に加えての苦である「愛別離苦」の歌が目立つ。

昔は民謡、今はポップミュージックなど、リズム感ある俳句や和歌は、人々の心を癒してくれる。人それぞれが、好きな詩歌を選んで詠唱するとよい。

万葉集の花と鳥

日本の詩歌や文学の背景には、「花鳥風月」の美しい自然がある。以下、万葉集が伝える「花鳥」の歌を紹介する。

川の() つらつら椿 つらつらに 見れども飽かず 巨勢(こせ)の春野は(春日蔵首老)
*「椿」は国字(日本製漢字)で、春の到来を告げる聖なる木。音声によって、つやつやした葉と花弁が奏でるまろやかな音楽が聞こえるようだ。

我が(その) 梅の花散る ひさかたの (あめ)より雪の 流れ来るかも(大伴旅人)

 *我が家の庭に白梅の花が散る、大空から流れ来る雪のように。万葉集は、桜よりも梅を愛でる歌が多い。

若の浦に 潮満ちくれば (かた)をな 葦辺(あしべ)をさして (たづ)鳴き渡る(山部赤人)

 *干潟がなくなると、鶴は他の葦辺に鳴き渡っていく。鳥の優雅な姿と、次第に遠くなる鳴き声と、足元に近づく水面と・・・。

梅の花 散らまく惜しみ 我が(その) 竹の林に うぐいす鳴くも(将監阿氏奥島)

 *散る梅とうぐいすの鳴き声と、季節は休みなき移り変わっていく。

コメント

*五感を通して心に響く美しい日本の花鳥。万葉集は現代人の感性を磨き、苦しみを癒してくれる。 [KK.HISAMA, 2019.7]

第2回 改めて『万葉集』をよみとる(その1)

はしがき

 万葉集(ビギナーズ・クラシック日本の古典)角川書店編、2019.443版)

この本との出会いは、九州国立博物館のおみやげコーナー、毎年4月に隣接する天満宮にお参りしてから訪れる。新しい元号の発表直前に出版されたが、初版は平成13年で18年前だ。

『万葉集』二十巻、4500余首の中から140首を選出している。4500余首の半分は作者不明という。天皇の歌、有名な人麿呂(ひとまろ)や家持(やかもち)など有名な歌が多い。万葉集ブームらしいが、学校教育で教わって以来、初めてひもとく人も多いと思う。幸いにも、本書はこれ以上やさしい万葉集はないと思われる内容である。

相聞の歌(人を愛する歌)

 冒頭の歌は雄略天皇が、早春の野原で出会った若い娘を見染めた相聞歌である。

早春の妻問い

 「()よ、み()持ち ()(くし)もよ み()(くし)もち・・・この岡に菜摘ます子・・・」と、籠と串をもって菜を摘む娘への語りかけで始まる。次に「大和の国は おしなべて 我こそ居れしきなべて・・・」と自分が支配者であることを告げ、「()らめ 家をも 名おも」と娘に尋ねる。男女関係が自由な時代の人々の性のエネルギーに驚く。

 

子らを思う歌

 山上の憶良(やまのうえのおくら)の有名な歌である

 「(うり)()めば こども思ほゆ 栗()めば まして(しぬ)はゆ いづくより 来たりしものぞ まかなひに もとなかかりて (やす)いし()さぬ」に続く反歌は、(しろがね)も (くがね)も玉も 何にせむに まされる宝 子にしかめやも 

 両親が、子どもたちの前で反歌を詠唱したことを記憶している。わが子に暴行を加え殺害さえする親たちは、この歌を知っているであろうか。日本の古典を大切にする教育がひときわ大切な時代と思われる。[KK.HISAMA,2019.6]

 

 

第1回:今年度の読書コーナーについて

はしがき

マンガ大国日本。マンガの黎明期に日本を離れ30年振りに帰国した時、書店にあふれるマンガ本をみたときはショックでした。その後の研究によって、アニメ文化で世界をリードする日本のマンガ作家たちの偉業はすばらしいと思います。

しかしながら、映画に続いてテレビの普及、そしてネット社会の登場によって、文字文化は縮小するばかり。文字から伝わる音声の意味を記憶によって精神的発達があることを考えると、やはり読書は重要です。今年度は、女性や学生にも興味ある読書コーナーを試みます。

図書館で思うこと

私がアメリカで博士課程の勉強した1970年代は、ワープロはもちろんネットもない時代でした。図書館内に個室を与えられ、読書に集中できた時間をなつかしく思い出します。
新聞・雑誌・絵本が多い市の図書館は混雑しています。しかし、専門書籍が多い県立図書館では、女性の閲覧者は自分ひとりだけが珍しくありません。「女性は本を読まない」は、出版業界の定説のようです。いや、女性だけではなく、若い人の本離れも悲しい現実です。

国会図書館・県立図書館は、政治家のための図書館という役割があります。アメリカのパブリックは、政治家は常に読書をしてほしいと願っています。レーガン大統領は、毎週10冊の本を読んだと言われます。もちろん、側近に読書してもらいアドバイスを得ることも可能ですが、やはり、自ら読書してほしいのです。

おわりに

日本女性は読書家に成長しない限り、よい政治家にはなれないのではないか。女性だからではなく、すぐれた政治家を望みたい。常に書籍を座右に、ネットから新しい情報を得て、子どもたちの明るい未来を拓いてほしいと思います。

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