好きこそものの上手なれ

好きこそものの上手なれ

はしがき

 帰国以来、関西から九州に住んでいるので、すずしい夏を求めて外国へ・・・。そんな私にとって久しぶりに見た秋田竿灯まつり。町内会の有志がそれぞれの竿灯を作り、あたりが暗くなった時点で提灯に火を灯して一斉に市の中心部の道路をパレードする。お母さんに抱かれた乳児から3−4才の幼児、学童から大学生、そしてまつりを守り続けている長老までが参加。まつりこそ日本人の絆と団結を育むイベントである。

パレードとバランスの技を見る

 大人用の竿灯は大きな竹竿に48個の提灯が並び重さ40キロ以上。これらの竿灯は写真で紹介されるので見慣れている人も多い。一方、小さな提灯が22個ほど並ぶ小さな竿灯が所々で見られる。パレードに続いて横向きの竹竿が突然縦に。いよいよ、竿灯の竹を顔の一部に乗せる伝統の技の披露が始まる。

 私が位置した歩道の前に子ども用の小さな竿灯が停止、幼児から小学生による技の披露である。小学生は3-5年生くらいで、見事にバランスする子もがいた。驚いたのは4-5歳の幼児がチャレンジする姿。皆、真剣な顔で竹竿をバランスしている。竹竿をおでこや顎にのせる子もいた。

 子どものまわりには2-3人の大人が見守り、バランスがくずれそうになると助ける。しかし、一番小さな子がチャレンジしたとき、バランスがくずれて提灯の明かりが一斉に消え、一つだけ残った。あきらめない子どもたちの希望の光となった一つの灯りは、最後まで消えなかった。

好きこそものの上手なれ

 子どもたちの竿灯への情熱をみて、私の脳裏に浮かんだのは親から子へ、世代から世代へ伝えられる日本人の伝統の技の大切さ。ある意味で、ことばも同じである。世界でも稀な美しい日本語を守るのは、親から子へ語り継ぐことである。

 アメリカで生まれた第一線で活躍する娘は英語だけしか話さない。イリノイ州で育った娘は、中学でドイツ語やスペイン語を選択科目として学んだ。やがて高校・大学でもドイツ語を学び、ドイツへ留学もした。今は医学界で活躍しているが、生活言語ではない外国語はすっかり忘れている。

多民族が住むアメリカでも、仕事で外国語を必要とする人は少ない。脳の働きも、ことばを学ぶ時間も限られている。日本の子どもたちが生活言語でない英語を学ぶことは、子どもたちにとってあまりにも負担が大きく、好きな技を磨く時間がなくなる。

おわりに

 「好きこそものの上手なれ」この格言を忘れてはいけない。竿灯まつりは、英語・英語と無垢な乳幼児まではやしたてる親のおろかさを反省してほしい出来ごとだった。[KK.HISAMA 8.2018]

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