トランプのアメリカ:The Circleが象徴するグローバル社会

トランプのアメリカ:The Circleが象徴するグローバル社会

ユニ社会へ進行した米国

前回に続いてトランプ政権下のアメリカ社会を描こう。ヒラリーは演説で、一○歳くらいの女の子に、自分の後に続くように話していた。最初の女性大統領と期待されただけに、落選は社会の一線で働く女性たちにとって大きなショックだった。深層ニュースの解説を読むと、フェミニストだったヒラリーの敗北は、時代の一幕の終りとも考えられる。

 女性の社会進出の陰には男性の存在が大きい。子どものない、または一人だけなら、どうにかなる。家事・育児に夫や身内の協力がなければ、自分の給料を全て費やして、誰かに家事・育児をしてもらうことになる。半世紀以上続いているアメリカのフェミニストとマイノリティの進出によって、米国社会がユニセックス・ユニレース・ユニエージ(男女差・人種差・年齢差のない)というユニ社会の方向へ進行したように思う。

トランプは、そうしたユニ社会に抵抗する市民たちによるポピュラリストだったと思う。ユニ社会への抵抗は、大学町で会った高齢者、公園に集うイスラム女性たち、信仰深い黒人の教会、大都市にある仏教寺院、アジア人の若人グループなど。ユニ社会の中で、自分のアイデンティティを守りたい人々が半数以上いることになる。

The Circle が象徴するユニ社会

こんなアメリカの大学町を後にした帰りの航空機で見た映画は「The Circle」。日本では11月公開で、主役はMae Holland という一見「無邪気な」女性、人気スターらしい。タイトルはMaeが仕事をみつけた巨大なIT関連の会社の名前。社員の会合は、大勢の若い社員が集まるロックミュージックのように熱気があふれる。

その会合で小さなカメラが紹介される。カメラはどこからでもリアルタイムでビデオが撮れる。Mae は地下室に案内され、そこにはあらゆる個人情報が保存される予定だと聞いて唖然とする。しかし、カメラの力を信じるMaeは旧知の男性Mが作ったシャンデリアの写真を公開。視聴者から避難をあびた彼と口論になり、Mae は夜一人で海へでてカイヤックを漕ぐ。

溺れ死寸前に救助されるが、それは会社のカメラによるもの。一方旧知のMは、運転中にカメラに追いかけられ事故死する。それでもMae はプライバシーのすべてを捉えるカメラの威力を信じる。

グローバル社会の到達点は透明人間か

私は渡米前ラジオで聞いた短編小説を思いだした。生活に困った若い男性が戸籍を売って「透明人間」になる。カメラで、インターネットで、世界中の人間と繋がるグローバル社会の到達点である透明人間は幸か不幸か。トランプへの投票者はグローバル化の更なる進展にストップをかけたのかもしれない。[KK.HISAMA, 2017.10]

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