第4回:これからの英語教育

第4回:これからの英語教育

 

失われた半世紀へ希望の光が!

 アメリカが日本に学ぶべきとする書、Japan as No.One: Lessons for America(1979)は、グローバル時代を生きる日本人の姿でした。成功の理由として、経済を担当する省庁の強烈な指導力を賞賛。日本人の英語力が劣っていることを指摘しながらも、大きな問題としていません。しかし、グローバル化が急速に進歩した1970年代から、英語教育を6年・10年受けても自由に話せない国民の不満が台頭・増幅するが、半世紀経った今も改善していません。

この間政府が試みた二大政策は、大量の外国人招へいと学習年齢の低下。いずれも効果が見えないのはなぜでしょうか?そこには様々な日本的事情があり、非常に複雑な問題です。ところが、急速な人工知能の発達を見ていると、英語教育の失われた半世紀は決して無駄ではなく、希望の光さえ見えているのです。

 この光が見えない4年ほど前のこと。こうした教育事情を刷新したいと考えた私は、アメリカで1970年代に始めた言語研究を再開。2年後に、研究所のホームページに「英会話の玉手箱発見の旅路から」をアップ。しかし、「玉手箱」を取りまく謎は深まるばかり。「玉手箱」の公開を躊躇している間に、更に2年が経過してしまいました。

人工知能と人間の知脳の違い

この謎に立ち向かう勇気を与えてくれたのが、世界的な知名度の棋士・羽生善治がNHKと協力して取材した経験に基づく書『人工知能の核心(2017)』です。碁やチェスなどマインドスポーツは、早くから人工知能のチャレンジを受けています。彼は少年棋士としてデビュウー、将棋の世界のフロントラインで、40年もAIの歴史の中で生きています。

Deep Blue がチェスの世界チャンピオンに勝利(1997年)した1年前に、羽生はコンピュータがプロ棋士に勝利する日を、20年後とほぼ正しく予測。今回の書は、自らの長い経験と、最新のAI事情を取材して、将棋における人工知能と人間の脳の働き方の違いを深く分析しています。

AIの歴史と同期に言語研究を始めた私の見解は、彼の意見と類似しています。脳における言語と将棋のメカニズムは、違いはあるが共通点が多いからです。どちらも人間だけがもつ高度な脳機能が必要ですが、人間の脳は生物の進化を支えた五感の働きによるもの。人工知能にはこの五感がないのです。

日本でも脳のメカニズムから英語を学ぶ試みが、コンピュータ技術者を中心に2005年頃から盛んになりました。これらの試みは、収益を目指す英語産業のフロントラインとなり、いろいろな形で学校教育にも参入。人工知能と人間の脳の違いを深く理解しない機械的な学習は、テストスコアなど短期的・表層的な効果があるかもしれません。しかし囲碁や将棋が示すように、人間はビッグデータを武器に日進月歩の勢いで進化する人工知能に敗北するだけ、幸福な未来にはつながらないでしょう。

人工知能と共栄する英語教育

自然言語は人工知能が得意とする分野で、文字・音声を「理解」し瞬時に対応します。これからの英語教育は人工知能を応用することで飛躍する可能性が見えてきました。今こそ、失われた半世紀を取り戻すチャンス。幸福な未来は、人間の脳にふさわしい教育から生まれます。こうした視点から、本シリーズでは最新の脳神経学と人工知能の最新の情報をもとに、新たな日本の英語教育のあり方を述べていきたいと思います。[KK.HISAMA 2017.9]

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