第2回:英語教育:人口知能(AI)時代のパラダイム・シフト

第2回:英語教育:人口知能(AI)時代のパラダイム・シフト

はしがき

戦後始まったテレビ番組の草分け、アニメ映画の神さまとされるS氏と京都でお会いしたときのことです。英語が苦手、イギリスに行ったときの経験から「英語は通訳にやってもらえばいいよ」と涼しい顔。それでもユーモアに長けたS氏、イギリスで「下手な英語」でひと言ユーモアを話した所、大いに喜ばれたとうれしそうでした。

英語を話すや否や

本のタイトル「日本人の九割に英語はいらない」は、英語教育のパラダイム・シフトを予測しているようです。スマホからパソコンまで、ネットの世界は人口知能による声と文字の自動翻訳の時代。「いつでも、どこでも、通訳を」という夢の実現です。人口知能による自動翻訳の更なる進歩は、読解と文法中心の教育の終りを意味します。一般の人にとって、翻訳は外国語の意味を知る一時的な手段ながらも、四技能をマスターする上で最大の妨げとなります。

思えば第一次グローバル時代、日本は三百年の安寧が続いていました。ところが黒船の到来によって突然の開国を迫られ、この危機を急速な西洋化で乗り切りました。同じく英語教育における百数十年の伝統を脅かすITという黒船が、日本の英語教育の行く手に表れたのです。西洋における外国語教育の歴史を調べて見ましょう。

西洋では、第一次グローバル時代が進展した一九世紀から、コミュニケーションのための外国語が必要となりました。やがて、教養のためのラテン語・ギリシャ語の読解と文法教育の改革が叫ばれ、音声で始まる外国語の口語教育が始ったのです。今から百数十年も前のこと。しかしながら日本では、こうした音声から始まる口語教育は実践されず、今日まで文字言語の読解・文法教育が続いているのです。視覚で意味がわかる漢字と違い、シラブル言語は視覚だけで意味がわかりません。英語の習得において、音声を学ばない限り日本語に訳して意味を理解するしかなかったのです。

日本人の英語は聴覚障碍者の発音と同じと言われます。ちなみに、聴覚障害者は手話、視聴覚障碍者は触覚によるコミュニケーションが主となります。障害があっても、なくても、コミュニケーションは五感から入るシグナルを脳へ伝達・記憶するのです。外国語の四技能をバランスするために、母語の介入は最大の障害となります。英語の学習でも、早期に英英辞典を使います。私は田舎の公立高校で学びましたが、教員の指示で英英辞典だけを使いました。文字言語が主でしたが、語彙や表現が自然に記憶され芋づるのように増えていきます。英英辞典で始まった教育は、アメリカにおける私の英語人生を豊かにしてくれました。

英語教育のパラダイム・シフトとは:_酸叱生譴鬟戞璽垢箸垢覿軌蕁Г垢覆錣繊∀辰靴海箸个魎霑辰箸垢觚語教育です。音声言語が基礎となる理由は、△海箸个凌真颪聾浚兇播舛錣覦嫐の記憶と再生が容易にできます。ことばは有形・無形の文化の伝達:かたちが違い、意味も違う場合は、文化が違うからです。有形文化だけでなく、ものの見方、考え方など外国語が内臓する無形文化が重要です。  

外国語によるコミュニケーションも母語と同じ、ロボットではなく人間のことばが内蔵する文化を伝えることです。今やインターネットの時代、誰でも情報の海へ就航できます。S氏が経験したように、これからの外国語は話す内容が勝負。教科書限定・テスト目標ではなく、学習者は自由に楽しく情報の海を旅するのです。学校教育の役割は、学習者のやる気を養い羅針盤となって、目的地に導くことです。なぜなら本人の意欲なくして「真のことば」を学ぶことはできないからです。[KK.HISAMA 2017.6]

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