第1回:生きたことばは楽しい!

第1回:生きたことばは楽しい!

 英語教育が目標とするコミュニケーション能力とは、生きたことばによるコミュニケーションであり、ことばで理解し合える楽しさです。それは、かたことを話し始めた乳幼児に見ることができます。一生懸命覚えたことばを話し、意味をわかってもらえるときの笑顔。ことばを習得する原点は、乳幼児のことばの発達にあります。人類の長い歴史からみると、ほとんどは音声言語だけで十分な生活でした。文字言語が発達した今も、学習の根底にあるのは音声です。

ことばの重要性は、命が始まるときから観察されています。人間の神経組織の芽は、母親が妊娠に気づく以前に現れ成長を始めます。生まれたばかりのベビーの脳には、何十億もの神経細胞があり、その数はどの年齢よりも多いのです。脳の発達とは、この無限に近い神経細胞を、必要なときに必要なだけつなぐこと。不要な神経細胞は刈り込んで数を減らします。この作業はことばの発達によって進歩します。

母語であれ、外国語であれ、ことばの習得は脳の働き方にあります。これまでの心理学におけることばの研究は、ねずみやサルの実験、そして乳幼児のことばの発達の観察・記録、脳障害者の臨床研究でした。今では、これらの現象はブレーンイメージングによって、脳の深部まで解明されつつあります。ことばの研究は飛躍的に進歩しています。

ベビーは生きるために必要なすべてを、親やまわりの人に頼らないといけません。自分の生命に危険があれば、まわりの人に伝えないといけません。ベビーは生きるために、触覚・視覚・聴覚・味覚・臭覚など、すべての感覚を使ってコミュニケーションします。動物のコミュニケーションは、「危険」や「空腹」など感情がほとんど、人間のコミュニケーションも原点は感情です。

ことばのコミュニケーションは知的な側面と、相手の心に訴える感情が大切です。感情は会社レベル・国家レベルの重要な決断さえ左右します。その例は「おれおれ詐欺」だけでなく、宗教や戦争まで限りなくあります。ともすれば、暗記するロボットになりかねない外国語教育。人間の絆の中で学ばれる感情を意識してほしいと思います。

外国語を習得する過程は、母語の習得を理解することから始まります。それは、一九世紀の末に西洋で始まった外国語学習刷新の原理と実践であり、研究で解明されたエッセンシャルな事実に基づく学習です。ベビーのように人間の絆の中で、自らが中心となり、絶え間ない努力と継続が大切です。継続の源泉は生きたことばを学ぶ楽しさ、理解しあえる喜び、そして同じコミュニティで生きる満足感です。

本書では、こうした内容の詳細についてやさしく述べています。グローバル時代を生きるためには、母語だけでなく外国語も必要です。ことばの学習は正しい知識から、これまでの誤った考え方を一掃して明るい未来に向かって一歩を踏み出してください。[KK.HISAMA 2017.4]

©2015 athena international research institute.