脳神経学が解明したことばの原理と学習法

脳神経学が解明したことばの原理と学習法

 去る12月11日東京国際フォーラムで開催されたランチョンセミナーの報告です。参加者が食欲と知識欲を同時に満たす楽しいランチョンセミナー。こんな考え方から、セミナーは、楽しい音楽と画像によって、ブレーンイメージングが解明した言葉の本質と、話し方の新しい学習方法を紹介しました。

 ことばは人間だけの特技。とは言っても、ことばはすべての生物が生きるためのコミュニケーションのかたちの一つです。生物は生きるために多様なかたちでコミュニケーションします。たとえば、初期の脳の研究はねずみでした。臭いでコミュニケーションするねずみは、脳の40%が臭いのためにできています。人間と霊長類・昆虫・鳥のコミュニケーションは音が重要、脳は音のコミュニケーションに適合しています。

 生きるためのコミュニケーションは、脳の三層構造の理解から始まります。この中で真ん中に広がる脳がことばの心臓部。ちょうど、複雑な航空路線のハブの役割をする脳の深部、感情脳と呼ばれます。この部分の脳は、動機・恐怖・言葉の記憶・学習等などを司る場所。外界からの音(受信)と体で発する音(発信)を取捨選択して短期記憶(中層部)し、前頭葉とやりとりすることで長期記憶(外層部)に発展します。

 母語であれ外国語であれ、ことばの受信と発信は胎児期から始まります。ヒト遺伝子の中にあるのです。ことばは音の連鎖によるメロディーであり、民族の原初的な音楽です。人類の長い歴史の中で、日本語は日本語特有な、英語は英語特有な音楽と発音のシステムが発達しました。音声の「システム」とは、書き言葉で云えば「文法」。しかし、システムは感情を伝えるため、文法とは次元が違います。 

 人間以外の生物のコミュニケーションは、ほとんどすべてが感情。ことばの記憶も感情脳が重要であり、コンピュータやロボットとは全く違うのです。このような原理による最新の外国語の学習法は「プロソディメソッド」。ことばを単純な音楽として体で覚えて、脳に記憶していく過程です。すなわち、脳は録音と再生ができる巨大なデジタルレコーダーであり、メモリーは無限に拡大します。セミナーでは楽しい学習のモデルとして鳥と乳幼児に焦点をあてました。

 子どもは脳のレコーダーに記憶するまで、同じ言葉をくり返します。親が故意に教えるのではなく、自ら楽しく学んでいるのです。巨大な大脳をもつ大人が外国語を学ぶときは、楽しいこどもの学習法を再現するのです。書きことばは、感情豊かな話しことばの幻影のようなもの。ことばの習得は幻影ではなく実像から始めることで脳に深く記憶され、受信(聞く・読む)と発信(話す・書く)の能力がバランスします。

 しかし、母語ですべてが可能な日本で、業者が行う乳幼児の英語教室は、脳の発達と共に自然に習得する母語にとってマイナス要素。このことは、乳幼児を対象とした母語への介入でさえ効果がなかった研究から明らかです。ランチョンセミナーでは、子どもの言語発達は、母語を習得した外国語教育を導く光であることを伝えたかったのです。

「子どもは大人の師なり」

セミナーは有名なワーズワースの詩、「虹」の一句で終了しました。

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以下のウエブサイトで、セミナーで使用したU-TUBEを再現できます。

 P.S. 学習の方法は実に単純、今後U-TUBEやテキストなどで紹介します。最大の困難は、戦後70年の英語教育が生んだ自信喪失の歴史に向き合い、困難を克服する国民の姿勢です。

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