米大統領選挙に思う

米大統領選挙に思う

はじめに

 オリンピックと同期に行われる選挙選が巡りくる度に、長い滞米生活を思いだします。一番目は東京オリンピックとケネディ大統領が暗殺された年です。以後体験した数々の選挙戦からわかったことは、大統領選挙は新・旧移民の共存と繁栄を目標とする米国民が、よりよい社会を目指して団結する重要なイベントであること。保守・革新の戦いは、票が拮抗するほど熱気があふれます。

 自由と競争原理を大切にする米社会は勝者と敗者が明確です。貧富や人種の差は、深刻な社会問題の根源でありながら、選挙戦のエネルギーとなります。国民はこうした社会問題を自分が望む方向へ転換すること願い、投票だけでなく、進んで寄付金や時間を提供するのです。

今回は、選挙戦が象徴する言論の自由と、グローバル社会を牽引する米国社会のコュニケーションについて考察します。

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民主主義社会におけるコミュニケーションのマナー

コミュニケーションの思い出は、私費留学など稀有な時代に、フルブライト全額給費生の栄誉を得た学生へ担当者からのアドバイスです。

「米国で決して話題にしてはいけないこと、それは政治と人種問題・・・」

感情が高まるこれらの話題を、おぼつかない英語で話すなら、誤解が誤解を生んで、拳銃の矛先になる危険があります。米国における人種の対立と拳銃による事件は、半世紀を経た今も変わっていません。

 しかし、英語に堪能になると、親しい仲間と政治を語り合うことは、米国社会を理解するよい機会です。夫が大学教員をしていた頃の出来事。当時の学部長は、積極的に外国人教員を採用・招待していました。政治に関する会話があったのは、ドイツからのS教授がホストをした夕食会の席でした。

夕食はパイナップルのサンドイッチという簡単なものでしたが、最大のおもてなしは会話。出席者はホストS教授とノールウェイからのJ教授、日本人の夫、彼らの妻たち。訪問教授だったS教授と、青年時代に戦火を逃れてノールウエィからやってきたJ教授は、保守と革新に別れ、話題も多岐にわたりました。政治に関する議論の後で、J教授がしみじみと言ったことばを今も思い出します。

「アメリカの強みは、異なる文化をもつ世界中からの移民が、政治によって社会をよい方向に導こうとするエネルギーだと思う・・・」

インターネットなどメディアを制する者が勝利を収めるようになった今、政治の議論は過熱し危険でもあります。若い頃から、議論によって自己の確かな思想を育て、感情を制する者が議論の勝者となる・・・民主主義の草の根運動が重要です。[KK.HISAMA,2016.11]

 

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