日本人の英語講座:第5回 ベビーが英語を学ぶとき(その2)

日本人の英語講座:第5回 ベビーが英語を学ぶとき(その2)

 はしがき

前回は脳レベルの研究によってベビーが言葉を学ぶ過程を明らかにしました。全体から部分へ、ベビーはマクロな音声の流れ全体を記憶し、一部を再生しているのです。「かたこと」は大人の言葉の断片ではなく、音の流れとしてのフレーズ・文章の一部。すなわち、「かたこと」は、「文章」の芽生えの形であり、時間と空間をともにする大人と交流しあう姿なのです。

子どもの言語発達:子ども・人・もの

 子どものことばの発達は「人びととのかかわりあい」を通して行われます。「かかわりあい」とは広義のコミュニケーション。子どもと大人は同じ人間、どちらも同じ身体構造をもち、どちらも相手に伝えたいことがあります。子どもの成長と共に発達することばとコミュニケーション力とは、両者の間に介在する「もの(事象)」に相互に関わる過程です。

「もの」とは食べ物・おもちゃのように物理的ものから、五感のすべてを使う言葉まで、あらゆる現象を意味します。大人の関わり方から、子どもは「もの」から伝わる物理的・社会的・文化的な「意味」を学んでいくのです。言葉は「意味」を伝える脳レベルの高度な手段なのです。

「子ども・人・もの」の関係は、専門語で「三者関係」とよばれます。子どもにとっては、この関係において絶対的に信頼する人の存在が重要になります。普通は母親、母親に代わる人では、同居する父親、家族、乳母、教師など、子どもがいつも自分のまわりで見て、言葉をかわす人たちです。子どもが成長するにつれて、言葉の発達には、年齢が上のきょうだいや学校の親友が重要になります。子どもは親のアクセントではなく、仲間のアクセントで話すことはよく知られています。言語学習において人間との関係が重要であることについては、サルの言語学習でも述べています。

言葉の「意味」と「かたち」

子どもがことばを話しはじめる光景は実に愛らしいものです。子育てをした人なら誰でも年齢を軸にして、子どもが話すことばの数とその意味を理解しています。どんなことばをいくつ話したかというアウトプットです。アウトプットは言わば氷山の一角であり、脳の内部でどれほど多くの努力があるのか、一般の大人は全くわかっていない。しかし、障害児の教育者は、するどい観察によって、ことばを獲得する悪戦苦闘を理解しています。

立場は違いますが、脳の手術をする医師や科学者は、事故や脳卒中によって起る脳の外傷から、ことばと脳の複雑な構造や機能について多くの知見を得ています。その中で、聴覚障害者と健常者を比較した研究では、母語獲得の過程における脳の機能が明らかにされています。脳レベルでは、障害者の手話と健常者の音声言語の違いは全くありません。なぜなら脳レベルでは、言葉の意味を記憶する作業であり、表現の違い(かたち)は意味を伝えるための手段であるからです。[KK.HISAMA 2016.7]

©2015 athena international research institute.