平成27年度

コラムの目的と内容

今年度からの新しい企画です。内容は筆者の幅広い国際経験、すなわちアメリカ5大学におけるコミュニティに根づいた生活体験、子どもたちを通して他8大学のレジデントとしての経験、帰国後は日本の大学人としてヨーロッパ・アジア諸国における5大学との国際交流や研究などを基にしたコラムです。世界各国を襲うグローバル化の高波の中で、日本人としてどう生きて行くのか、心の健康、言語、コミュニケーションが中心となります。

それは、グローバル化の光と陰を見つめること、中でも急速に悪化している精神的な問題にどう向き合うのか。日本人の精神性については、これまでも本研究所の中心課題として読書コーナーやセミナーで取り上げて来ました。ホームページのアクセス状況が24時間に分布しているので、世界各国で生活する日本人と日本の事情に興味がある方々がエントリーされていると思います。

今年度始まるコラムのターゲットは、新しく海外生活を希望する人々、すなわち、国家の新たな教育方針によって国際社会に飛立つ学生、拡大する日本企業を担うビジネスマンや技術者、その家族など幅広い方々のためになるコラムを目指します。海外生活の準備と言えば、まずは言語コミュニケーション。言語の重要性は変わりませんが、今では先進国となった日本人の場合は会話内容やマナーが問われます。昔に比較すれば、物と情報があふれ、お金も不自由しない時代、海外生活の準備も大きく変化しています。長期スティなら健康への配慮も課題で、女性の場合は妊娠・出産があります。

このような諸々の準備が必要ですが、核となるのは人間が生きることの意味、すなわち、アイデンティティです。小さな池から大洋に放流された魚がサバイバルするための必須条件、それは、これまでは意識しなかった個人のアイデンティティです。海外旅行がごく少数の特権階級だけに許されていた時代に読んだ記事を思いだします。当時、広く海外旅行をしていた執筆者によると、海外では「根無し草になってしまう」とありました。根のない人間は本当に不幸です。日本人としての根であるアイデンティティをどう育て守るのか。その可能性を探求したいと思います。

[KK.HISAMA. July 2015]

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