第3回:医療の社会保障と経済危機:アメリカの事情(3)

第3回:医療の社会保障と経済危機:アメリカの事情(3)

 過去二回に渡って同じトピックでアメリカの事情を述べてきた。前回は、オバマ政権が実現した医療の社会保障(The Affordable Care Act)、俗に呼ばれるオバマケア に関してアメリカを二分した議論と最高裁判所の事情聴取と審議について説明した。その結果は、独立記念日の一週間ほど前に発表された。今回は、アメリカ最高裁判におけるエピックとも言える裁判官による決定と今後の医療保障への影響について述べる。

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  結論から言えば、裁判所はオバマ大統領のヘルスケア法律を支持した。これによって、米国民はヘルスインシュランスを契約しなければならない、しないと税金と同じく罰則を払うことになる。その結果、重い病気のために医療保険を拒絶されることはないし、自分が支払いないほど高額の保険料を要求される可能性は少なくなる。高額の保険料に苦悩する中小企業の経営者は喜びをかくせないようだ。バージニア州の田舎でクリーニング屋を経営する女性は、
 「我々はうれしくて大笑い、お互いに抱き合ってよろこんだわ」
と言った。彼女は糖尿病のため保険が契約できなかった。
しかし、今回は政府が提唱する医療保険の全面的な勝利ではない。なぜなら、政府は個人が契約できないような高額の医療保険を強制することはできない。また、収入の少ない人のために支払うメディケイドという保険においても、政府が内容を強制できないからである。保険は日本のような政府による一律なものではなく、グループや個人が保険会社と契約するので、彼らの裁量で保険内容はあくまで流動的なことを前提としているからだ。    
  前回も述べたように、アメリカ医療の社会保障は、日本などとは一線を画すもので、自由と自己責任を追及する国民性が背景になっている。カナダ(30万ほど)やヨーロッパの国々と異なり、アメリカは2億人という膨大な人口をかかえている。ほとんどの人は、すでに自らの知恵を集めて医療の社会保障の恩恵を受けているので、今回のオバマケアへの審判の影響は少ないとされる。時代の流れに適応していく国民的な意志があり、その一つは、20世紀の後半に頂点に達した延命医療のその後の変化に反映されている。
  このことについては、今,行き詰まって出口の見えない日本の医療経済を考慮しながら、次回からの課題として考察したい。

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