第2回:医療の社会保障と経済危機:アメリカの事情(2)

第2回:医療の社会保障と経済危機:アメリカの事情(2)

 前回は、今から60年以上も前にイギリスで始まり、世界の先進国に広まった医療の社会保障の背景と、アメリカの最新医療事情を述べた。アメリカ医療の社会保障が、他の先進国と一線を画す理由は、自由と自己責任を追及する国民性である。医療の社会保障とはいえ、政府が強制するなら、自由の侵害と考える人が少なくないのだ。オバマ政権下、他の先進国と同様な国民皆保険の法律が実行されたのに、これを不服とする裁判があとを絶たない。国民を二分する議論に発展し、遂に最高裁判所で審議が行われている。
 決定は、7月4日の独立記念日までには出る予定で、全国民が何らかの形で影響される。特に影響されるのは健康保険を持たない50万人である。アメリカは2億人という先進国で最大の人口をかかえるが、ほとんどの人は、医療の社会保障の恩恵を受けているので、今回のオバマケアへの審判の影響はそれほどないという。その背景には時代の流れに適応していく国民的な意志があるからだと思う。
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 私は15年間、州立大学(学生数2万数千人)のクリニックで働いた。クリニックは学生専用で診療部門とウエルネス部分にわかれていた。診療部門は医師、ナース・プラクティショナー、薬剤師、X線技師、ラボの検査技術師などチームで、普段、学生が必要な医療はすべて提供していた。メンタルヘルスは精神科医一人であるが、大学のカウンセリングサービスと連携している。救急医療や重い病気などは、市のクリニックや病院と契約して、学生はそこで治療を受ける。保険料は当時で年間2万円以下(1990年代)、大学が保険会社と契約していた。大学のクリニックの他、必要ならば市のクリニックや病院入院費まで、無料であった。
 ほとんどの学生は自宅を離れて遠い大学町で生活するので、こうしたクリニックは全米にあり、クリニックの職員はカレジ・ヘルスという全国組織に加入、学会や学会誌もあり、職員は相互のサポート、研究の機会を与えられた。アメリカの大学は、規模が何万人単位、プライベートと言っても、独自の理念がある公的機関で規模が大きい。学生はキャンパス内や隣接する町で生活するので、スポーツ施設や音楽・劇場、警官部門、教員のレンタカーまである。そのため、大学で働く職員数は膨大で、彼らのための診療組織も各地で広がっていた。
 これは消費者グループが主体となって健康増進と並行して医療を効率的に提供するしくみ、一昔前から実現されていた。今年度、オバマケアの法律が制定されてから2年が過ぎ、実施への移行が義務化されるまで期間の半ばである。最初の2年間に起こった変化は、消費者クループのために、彼らが望む医療を効率よく提供すること。グループがサービス内容を選択するが、個人も選択肢があり、保険料は驚くほど安いし、医療費は無料である。
 一例をあげれば、大学職員が帝王切開で出産、1週間の入院となったが、妊娠から出産、入院費、小児科検診まで、すべて無料であった。

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