読書コーナー(平成24年度)

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アンチエージングの理論と実践の方法:後 編

   満尾 正 125歳まで元気に生きる:体内から若返るアンチエージング、 小学館 2005.4  

   著者は米国でアンチエージングを学び、帰国後は個人のクリニックをベースにキレーション治療とアンチエイジング認定医として活躍している。
内容は7章に整理され論理的な展開である。第1章:老化のサインを見落すな!では身体的なサインを20ほど挙げ、3大原因は1.活性酸素、2.多量のたんぱく質摂取、3.ホルモンである。第2章:間違いだらけのアンチエージングでは、思い込みによる間違った習慣を指摘し、医学の進歩が健康の常識を変えるので最新の情報が必要と言う。「21世紀の医師は患者をより健康な姿にする道案内人」であり、漢方医の「上医」と同じ考え方であると指摘している。
第3章で科学の光りを当てたアンチエージングの方法を「ちょっとした」習慣として食生活、運動、睡眠、呼吸に整理、和食のすばらしさを強調する。続く2つの章はサプリメント、ストレスマネジメントの具体的方法で、茶道のすばらしさを述べている。
第6章:アンチエージングのための最先端医療:キレーションで血管からの若返りは、本書のユニークな部分である。「キレーション(Chelation)」とはギリシャ語「キール」=蟹のはさみに由来、特殊なアミノ酸を点滴して、体内にある望ましくない金属を腎臓から体外に排出する。動脈硬化を治療する可能性があり、心臓病や脳卒中の予防になるかもしれない。治療には数ヶ月かかること、一回の点滴が1時間半から3時間かかり、副作用の可能性があるなどの問題がある。
最終の第7章では外見のアンチエージングについて、目の若さ、健康な肌、姿勢、歯の健康の重要性に加えて、洋服の色による効果まで言及している。
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 前回と今回、2人の臨床医によるアンチエージングの方法を読んで感じたことは、自然を敬う日本人の生活の中にアンチエージングの知恵が多いことだ。大きな違いはアメリカ的で侵襲的な高度医療キレーションの使用である。身体の脂肪を人工的に吸引するような危険な高度医療は如何なものか。その一方で、著者・満尾は茶道の世界のすばらしさに魅了されている。高度医療の最先端を行く医師が必要な解毒剤(antidote)なのであろうか。(2012.10.13)

 

アンチエージングの理論と実践の方法:前 編 

   鶴田光敏 Dr. 鶴田のAnti Aging: この方法であなたも十歳若返る! MY BOOK, 2004

  満尾 正 125歳まで元気に生きる:体内から若返るアンチエージング、 小学館 2005.4

  アンチエージングの由来はもちろん米国、当地ではすでに60年代の末から70年代の初期に、国民の間で健康志向が急速に広まって行った。当時は、高度医療の恩恵や科学的に実証された生活習慣によって、人間は125歳まで生きると考えられるようになった。反面、高度医療に伴う医療費増加への危機感が強かった。日本では米国の健康志向の影響によって21世紀を境に、専門家がアンチエージングを叫ぶようになった。今回から2回にわたり、アンチエージングを実践する2人の臨床医による著書を比較しながら述べる。
 

 鶴田光敏 Dr. 鶴田のAnti Aging: この方法であなたも十歳若返る! MY BOOK, 2004

 著書の目的は、アンチエージングの明確なセオリーと具体的な方法を述べることである。著者は、日本でいち早く老化の原因として活性酸素を指摘(『老化もガンに酸化が原因だった』1994)、以後「老化や若返り研究の専門家」として知られている。東洋医療にも造詣があり、食べ物中心としてお茶の効用も述べている。著者が医師を志望したきっかけは、「健康オタク」と思った父が30代で皮膚にたくさんのシミでき、43歳でポックリ死亡したことであった。実はこのシミは皮膚だけでなく、脳や内臓にもできており、原因は「活性酸素」だったと言う。

 アンチエージングの重要な要素は、1.活性酸素、2.肥満、3.ホルモン、4、免疫、5.遺伝子。著者は1.2.の要素は個別に、3.4.5の要素は同じ章で説明している。 1.活性酸素:細胞や遺伝子を傷つける恐ろしい酸素分子である活性酸素は、身体に侵入してくる菌や異物を溶かしてくれるが、過剰になると細胞の外へでて身体に害をもたらす。活性酸素は多くの生活習慣病をひき起こすので、身体の酸化をブロックする野菜中心の食事がよい。 2.肥満:生活習慣の要因、老化を促進して様々な病気をひき起こす。著者はなぜ肥満になるか、続いてダイエットの方法を詳細に述べている。効果があったダイエットの法則は:NO油こいもの、肉より魚類、NOジャンクフッド、た物繊維、ノ于色野菜、Δ修弌↓良い水、┘汽廛螢瓮鵐箸任△襦 他3要素:これら3要素の中で興味深いのは遺伝子に関すること。個人が抱えている遺伝子はそれほどの差がないが、よい遺伝子を目覚めさせる方法(遺伝子のONとOFFの機能)に個人差がでるという。よい遺伝子を目覚めさせる方法:〇廚いって今の環境を変えてみる、⊃佑箸僚于颪ぁΦ_颪箸料遇を大切に、どんな時も明るく前向きに考える、ご尭阿垢襦↓ゴ脅佞垢襦↓世のため人のためを考えて生きる。第5章では遺伝子のONとOFFにより、高齢者でありながら画期的な業績を残した名士たちの事例を述べている。

  遺伝子に関して鶴田は地球上には同じ起源をもつ200万種の生物がいるが、遺伝子という生命の設計図はどうして出来たかと問 う。人間を超えた「偉大なる何者」かの存在、「もしかすると我々は、実は神様のような大きな存在に遺伝子で操作されて、ただ生かされている・・・」のかもしれない。この大きな枠の中で人間はよい遺伝子をONに悪い遺伝子をOFFにできるのであろう。米国におけるアルコール患者の治療に関わった経験から、同様な考え方がアルコール患者のただ一つ有効な治療法(アルコホリック・アノニマス)に織り込まれていると思う。 KK HISAMA 2012.9.5

日本女性の本質:性の解放か堕落か:後 編

 
石川松太郎:女大学集、平凡社、1977.
家田荘子:イエローキャブ・成田を飛び立った女たち、恒友出版株式会社、1991.
 
 今回のイエローキャブは、「女大学」書の源流となる貝原益軒の書から、300年の時を経て出版された。1990年代の初期は語学研修も入れ「留学」の最盛期で、年間7万人ほど渡米していた。本書はLAとNYに渡った70-90人へアンケート調査、その中からの28名インタビューしたレポートからである。
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 イエロー・キャブは日本人女性のあだ名で、流しのタクシーのように容易に拾える意味。内容は、20代の女性を中心とした11人の現地報告である。数例を挙げると:
 1.ジャパニーズ・ハーレムの女たち:今では5000人以上の日本人が住みジャパニーズ・ハーレムと呼ばれている貧困なアパート街。日本人女性が男に心、体、お金を吸いとられる
 2.それでも私はNYにいたい:電話中に強姦された・・・そしてドラッグの生活へ
 3.最愛の男とお金のための男と:男を助けたいと貢ぐ女で、黒人の音楽に惹かれ黒人と結婚
他8編あり、最後の「ウォール街のプレイボーイ:エリート証券マン:22歳」の報告は、経験の少ない若い女性の心をつかむIT時代の男性、だまされる女性に次々に罠をしかける。金・麻薬・セックスの恐ろしい世界の片隅で生きる日本の女たちの物語である。私は1950年代に、シンガーとしてLAに渡った女性に会ったことがある。彼女は普通の男性と結婚し家庭をもって、息子の成長を喜んでいた。留学も公費の時代で真剣な学生が多かった。それから半世紀、経済的な余裕ができ、語学研修の名目など、安易な留学の道が大きく開いた。
 アメリカで生活していた80年代に、私は日本の国内でも性のモラルは堕落していたと思われるエピソードを聞いた。一つはペルシャ美人で、真面目な留学生の話。政府の資金で日本に短期留学したとき、外国人留学生の宿舎に群がる日本人女性の性の堕落を批判していた。他は、東京に住む主婦から、有閑マダムたちの午後のよろめき。このような時代に書かれた本書、著者はショッキングながらも、女性たちを「愛し始め」彼らの生き方を「価値観の違い」としている

 イエローキャブと云われる日本女性の行動は、ゲイシャとフジヤマで世界に知られたモラルが残っているのかもしれない。日本女性の性の考え方における二極性である。それでも私は思う、この本の価値は反面教師なのではないかと。今年もニューヨークの地下鉄に日本人向けの語学学校の広告が出ていた。海外留学を安易に考える若い女性たちが、渡航する前に、これまで3回に渡ってレヴューした書に目を通してもらいたい。[KK.HISAMA. 2012.6]

日本女性の本質:性の解放か堕落か:中編

石川松太郎:女大学集、平凡社、1977.
家田荘子:イエローキャブ・成田を飛び立った女たち、恒友出版株式会社、1991.
「じゃんぎり頭をたたいてみれば文明開化の音がする」 近代化・欧米化が叫ばれた明治の御世になり、少なくとも7人の著者による女大学の書が次々に出版された。一連の女大学書の最後に公刊されたのが、福沢諭吉(1834-1901)晩年の書であった。貝原益軒の『和俗童子訓』(1716)から、すでに183年、今から113年も経っている。
 
福沢諭吉著『女大学評論・新女大学』(1899)
 「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」(学問のすすめ)
有名な『学問のすすめ』にある名言の一つ、福沢は貧富・貴賎の差を克服するために学問をすすめた。この思想が「新女大学」の基調となっている。『新女大学』は23項目あり、第1の項目が男女平等を説き、次に妊娠・出産・新生児の養育すべての過程における男性参加の重要性を強調している。近年叫ばれている「イクメン」と主旨が同様で興味深い。また、女性の学問では、経済力を養うための知識や物理学の重要性を教える。残念ながら、わが国で男女平等が普及したのは、1945年の敗戦後にアメリカ民主主義の導入からであり、イクメンは今も一般的ではない。
 
 一方、歴代の「女大学」の書が崇める日本女性の徳義や美風にも深く言及している。教育を受けたからと言って、他者を卑下するとか、やたらと議論してはいけない。「最も大切なるは、家族団欒、相互いに隠すことなきの一事なり」として、「自尊自重を以って社会の平等線に立たしめんとするの微意にして、ただに女性の利益のみに非ず、共に男子の身を利し家を利し子どもを利し、一害なくして百利百福を求むの法」としている。
 
 「女性の品格」が人気をよんだが、福沢は「気品」についても述べている。アメリカ式民主主義の誤解というか、その後のライフスタイルを反省するためにも、福沢が教える日本女性の美徳について、この書お読みいただきたい。日本女性の伝統的な美徳については、古いヨーロッパの国々、いやアメリカでさえ成功の秘訣と思う。実力主義のアメリカで、30代で教授に昇進し、いち早く最難関とされるアイビーリーグ大学の終身的地位を得た女性の話を分析してみると、日本女性の美風が追い風になったように思う。[KK.HISAMA 2012.5.15]
 

日本女性の本質:性の解放か堕落か:前 編

 
石川松太郎:女大学集、平凡社、1977.
家田荘子:イエローキャブ・成田を飛び立った女たち、恒友出版株式会社、1991.
 
 今回から、3回に渡ってレヴューされる2冊は、日本女性のモラルに関する著書である。我々が今日「女大学」と呼んでいる書の源流は、貝原益軒が著わした『和俗童子訓(宝永7年1710)』にあり、他は平成初期に出版されている。それ故、出版において300年近い差があるが、これらの著書を比較してみると日本女性の本質が見えてくるのではないかと考えた。前編と中編では石川松太郎の『女大学集』から2編、後編で家田荘子の『イエローキャブ』を紹介する。
 
石川松太郎:『女大学集』、平凡社、1977
 戦後民主主義の嵐の中で、「完全に葬られた」すべての「女大学」書を収集した歴史書である。ちなみに、今日「女大学」とされる本の内容は、『女大学宝箱(享保元年1836)』から編集されている。著者によると、日本の家族制度は900年も続き、「女大学」はそうした家族制度を支えた書であったと言う。『女大学集』は、「女子を教ゆる法」[貝原益軒の『和俗童子訓』1716]、「女大学」[『女大学宝箱』1836]を始め、福沢諭吉著の『女大学評論・新女大学』(1899)まで、「女大学」の名で編集・出版された著書から9点を選んで、校訂・収録したものである。
前編では「女子を教ゆる法」と「女大学」、中編では『新女大学』をとりあげる。
 
「女子を教ゆる法」[貝原益軒の『和俗童子訓』]:
 貝原益軒は江戸時代前期の儒学者・教育家、『養生訓』は今も広く読み継がれている。『養生訓』が健康書であるなら、『和俗童子訓』は人間教育の書である。封建時代にふさわしい教育書であり、その一部である「女子を教ゆる法」は封建時代が求める女子教育書であった。男尊女卑という封建時代のレッテルをはがして読むならば、益軒の健康書のように学ぶことは多々ある。
 例えば、女徳としての心の正しさである。「およそ女は容(かたち)より心のまされるこそ、めでたかるべけれ」とある。いにしえの例として、中国帝王の妃で姿は醜くいが、心がすぐれ国家を繁栄させた無塩(黄帝の妃)、楊貴妃などのように姿はすぐれたれど天下の災いを招いた妃の例を挙げている。また、無限の可能性をもつ幼い頃からの教育の重要性を説いている。
 反面教師と言うか、女性にとって望ましくない事は、女性七去の法から学ぶことができる。この中で姦淫、嫉妬、多言、盗みは許せない。しかし、不妊、悪しき病、などは、天命にて、ちからの及ばざる事としている。
 
「女大学」[『女大学宝箱』]:
 「女子を教ゆる法」を下敷きにして婦徳を中心に19条の教訓を述べている。特徴は二つあり、一つは漢字とひらがなまじりの行書体で書かれ、上部に芸術作品のような挿絵があること。文字の手習いができるし、書きながら内容を吟味して学ぶことができる。二つは原書で女子の教養にかかわる様々な記事を収録して、新しい時代の背景を与えていること。教える内容は原則的に同じでも、こうした工夫によって女子教育をより具体的にしている点が大きなメリットである。古語(ふることば)を引用した最後の一文が興味深い。
「人よく百万銭を出して女子(むすめ)を嫁せしむることを知って、十万銭を出して子をおしゆることを知らず」

現在の教育日本からみれば、こうした教えが長く後世に残されているように思われる。ただし、教育の効果は基盤となる家庭教育があってこそ見られるのではないか。

[KK.HISAMA.2012.4.12]

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