読書コーナー(平成22年度)

読書コーナー(平成22年度)

第一回 妊娠・出産・育児に関する著書:はじめに

 
  過去10年ほど私はイギリスの歴史と文化と健康に魅了されて研究を続けてきたが、去る3月久しぶりにニューヨークを訪れる機会があった。ちょうどフローレンス・ナイチンゲール著『看護覚え書』の翻訳と編集を終えた直後だった。翻訳の過程でナイチンゲールが最も高く評価する「マンスリー・ナース(monthly nurse)」という全く新しい言葉を知り、貴族文化の中で発達したイギリスの高度な看護が、新天地アメリカではどのように実践されているのか疑問に思っていた所だった。「マンスリー・ナース(monthly nurse)」は日本語で「産婦つきナース」と訳されている。日本の伝統文化では、祖母や姉妹が経験によって行っていた看護が、イギリスでは高度な技術を要する専門職として実践されていたのだ。
  少子化に歯止めがかからない日本とは対照的に、ヨーロッパでは妊娠・出産をする女性たちに対する政府の手厚い政策が効を奏して、若い世代の出産はすでに定着した観がある。しかし、アメリカは違う。年間数百万人に昇る移民の医療費問題や、企業優先の政策などによって国民皆健康保険は難航し、ヨーロッパのような手厚い保護はまだまだ実現していない。しかし、一昔前にウィマンズ・リブで生れたキャリアウーマンの間に、今静かなベビーブームが起っているのだ。それを確認できるのは、セントラルパークなど大都市の各地に整備され自然豊かな公園である。晴れた日は週日でも、マンハッタンの高級住宅地にある公園や、庶民的な住宅地ブルックリンなどで、小さな子どもたちと彼らを見守る人びとがあふれている。

  本シリーズでは、これら高学問・高知能のキャリアウーマンたちが、どのように妊娠から子育てまでを行っているのかを考えるためにアメリカでベストセラーとなっている最新の著書と筆者によって新しく翻訳されたばかりの『看護覚え書』の内容、日本の育児書などを比較してみたい。なぜなら、彼らキャリアウーマンは、ナイチンゲールもそうであったように、古い迷信よりは科学の光を当てた、より最新の情報を大切にしているからである。彼らは著書から何を学んでいるのか、それは書店にあふれる多数の書に反映されている。次回からは全米の母親たちの間で広く愛読されている著書からいくつか選書して紹介する。ご期待ください。[2010.5 K.K. HISAMA]

第二回 住宅街で最高に幸せな赤ちゃん:前編

 
The Happiest Baby on the Block:by Harvey Karp, M.D. 2002
 
  第二次世界大戦終了後に世界中で起ったベビーブーム・・・都市化の進行に伴い急増した核家族、乳幼児をもつ母親たちは祖母ではなく小児科医と育児書に頼るようになった。アメリカでは有名なドクター・スポックの『ベビー・アンド・チャイルドケア』、日本でも松田道雄の『育児の百科』がベスト、ロングセラーとなった。戦後生れたベビーたちが高齢者となった今、欧米の先進国ではウイマンズリブの世代を経て、若い女性たちの間で静かなベビーブームが起っている。女性の権利、高度な教育を受けた女性たちのベビーとして生れた母親たちは、今どんな育児書を求めているのだろうか。
  ニューヨーク市の書店に並ぶ数百冊の書を見ると、妊娠・出産・育児を関連させるトータルな育児を目指す読者の動向が伺われる。子ども連れで買い物するパパも多く、育児における男性参加が進んでいる。昨今育児書のベストセラーは、ミステリアスな新生児の育児、特に激しく泣き続ける新生児と泣き止まない乳幼児に関する本である。今回紹介する本は泣く子を魔法使いのようになだめるもので小児科医が執筆している。
今回紹介する本は泣く子に科学の光を当てた理論編Part Iと、対処法を述べる実践編Part II で構成されている。医者となるためには学問とクリニカル・プラクテスがあり、ナースは基礎医学と看護学、看護実践があるので、一般の両親も理論と方法を学ぶという所か。アメリカの多くの臨床医のように、著者K医師は高度な医学教育・科学的研究を終えてから小児科の現場で働いている。その過程で発見した核家族における新生児の育児の極意は、食(feeding)となだめること(calming)にあるという。彼は医学教育を終えてから二年間研究者として子どもの虐待問題に取組んだが、後に臨床医となり5000人を超える両親の声を聞いている。なだめることの重要性を強調するのはこうした経験からわかった。
  泣き続ける赤ちゃんによって気が狂い虐待する親は、近年日本でもめずらしくないが、アメリカでは長い間深刻な問題。科学的な現代医学によると、泣き喚くベビーの問題に対する二大アプローチは、祖母のように抱いてなだめるかパシファイヤーと呼ばれる乳首を与える。それがだめなら鎮静剤や抗痙攣剤の投与であった。しかし、投薬すると死亡するケースがでたので中止、泣く子の数は増加するばかりである。何とかして乳幼児虐待を止めたいという一心で、K医師は二年間乳幼児の発達学の研究に没頭し、歴史をさかのぼってあらゆる研究論文をつぶさに読んだ。その結果、昔風の育児法を継承している国では子どもはあまり泣かないことがわかったのである。

  こうした昔の育児法に科学の光を当てて、現代の両親が魔法使いのように泣く子をなだめる方法を教えているのが本書である。筆者がとりわけ注目したのは、四六時中いつでも泣きだす新生児をなだめるための根拠となる発達理論である。次回はK医師が掘り起こした新生児の脳に関する発達理論によって、新生児がすぐにも泣き止む昔風の方法に対する科学的根拠を紹介しよう。[KK.HISAMA, 2010.6]

第三回 住宅街で最高に幸せな赤ちゃん:後 編

The Happiest Baby on the Block:by Harvey Karp, M.D. 2002
 
 高度な教育を受けた現代の母親たちを納得させるためには、科学的な根拠を示す必要がある。新生児育児の二大問題の一つは泣く子を「なだめる(calm)」ことで、その根拠となる発達理論は脳の発達過程に関するものである。著者が注目した脳発達理論とは、人間は他の動物と比較してけた違いに大きい脳をもつこと。すなわち、巨大な脳を内臓する頭骸骨が無事に産道を通過するために、脳が充分に発達する3ヶ月前に出産しないといけない。すなわち、3,3,3のトライメスターで出産するので、脳は外部で生きるまでに発達していない。すなわち最後の3ヶ月が不足のため、子宮という理想の世界から突如不完全な脳のまま、不完全な人間社会に出された赤ちゃんの困惑と苦しみは我々の想像を逸する。
 子宮内は安全で、24時間いつでも眠り栄養が補給され排泄ができた。しかし、出産するやいなや昼と夜があり、睡眠も、食事も、排泄も、意のままにならない。気温も暑かったり寒かったり、空気は乾燥したり湿気があったり、その上人間社会のうるさい物音で、いやはや住みにくい。一番重要な脳の発達にとって産後の3ヶ月、特に最初の1ヶ月はとても重要である。頭骸骨や首の骨も固まっていないので頭はぐらぐらする。不完全な脳をかかえて、こんな不完全な環境では、泣いて助けを求めるしかない。機嫌のよい可愛いい赤ちゃんなど生後3ヶ月は待ってもらうことになる。こんな赤ちゃん事情を知らないモダンなママやパパは、昼も夜も泣きだす赤ちゃんをなだめる方法を知らない。自分たちの睡眠不足やストレスが積もると、赤ちゃんを悪者にして虐待に走るのである。
以上は新生児における「失われた4番目のトライメスター」理論である。それ故に泣き続ける赤ちゃんをなだめるためには、子宮内に似た環境を与えること。それは昔の祖母たちが経験によって知り、今も古い文化が残る所で行われている。そうすることで、赤ちゃんは反射的に「泣く」という行為とは反対に「おとなしく」なる。
方法は無数にあるが、著者はアルファベットの「S」で始まる5種類に整理している。
  Swaddling:ブランケットできっちりと包む
  Side/Stomach:横向き、腹ばいの姿勢:腹ばいは危険視されるようになったが・・・
  Shhhhing:単純で連続する音:ヘアドライアーで成功した例がある
  Swinging:揺れる、振動する
  Sucking:乳首を吸う、母乳は理想的

 たとえば、寒冷な東北地方の「いづめっこ」は大きな丸い木製の桶のような器の中に、幾重にも包んで赤ちゃんを入れる。下にまくらなどを入れると揺することができる。きしむと音もでるし、横向きにもできる。電車や大型のマイカーの振動は大人も眠るほど心地よい。同じように抱いて揺すってあげるとよい。「くせになる」と言って抱かない習慣は間違っているという。もちろん空腹を満たす、おむつを替える、室内の温度・湿気・音・清浄な空気、体の清潔などへの配慮は基本事項である。[KK.HISAMA, 2010.7]

第四回 よく眠り幸せな双子ちゃん: 前編

 Healthy Sleep Habits, Happy Twins: A Step-by-Step Program for Sleep-Training. Marc Weissbluth, M.D. 2009

 
 生物学的な出産年齢から言えば30代はすでに「高齢」、40代は「後期高齢」とも言えるのではないか。しかし、現在のような長寿社会では出産年齢までが誤解され、30代は若く、40代でも高齢と思わない女性もいる。40歳の前半で医者に「高齢」と言われて大怒り、うっ憤を晴らすために新聞社のブログに投稿した女性がいた。ここでは出産の生物的出産年齢を基準としている。
高齢出産が増加している現在、多胎児の出産が急増している。従来から知られているように、高齢出産では母体が飲食物や空気など環境汚染に晒される年月が長くなるので障害をもつ子が生れやすいし、仕事や家庭のストレスが多いと、未熟児の出産が増加する。本書は経験豊かな小児科医が、多胎児の睡眠問題に焦点をあてた著書である。前編では第一部から睡眠が脳の発達に及ぼす影響について述べ、第二部の睡眠のしつけ方については後編で述べる。
 良眠は脳への健康食:栄養不足による発育不全、脂肪分や糖分の多い食べ物、いわゆるジャンク・フウドによる肥満・高血圧・糖尿病・心臓病が起るのと同じく、良眠が得られないと脳の発達が阻害され、様々な脳・神経障害が起る。いわゆるジャンク・スリープの主な症状は:極度の疲労、不機嫌・かんしゃく・怒り、社会的・知的発達障害、パーソナリティ障害、運動障害、高血圧や血糖の異常による病気などである。
 脳の発達に貢献する睡眠:睡眠状態の脳は単なる休養状態にあるのではなく、脳の発達に不可欠な活動をしている。それは覚醒時の脳の活動とは異なるもので、知的活動における集中力とか、望ましい気質を養う。睡眠のパターンとか、容易な入眠など、睡眠の習慣は脳の発達による。「にわとりと卵」のような関係だ。

 お昼寝が夜間の睡眠をよくする:赤ちゃんや幼児にとってお昼寝は特別な意味をもつ。よくお昼寝するほど、日中は元気で遊び、夜間はよく眠れる。眠りが眠りを誘う(Sleep begets sleep)のである。多胎児や未熟児において、充分な睡眠は特に大切なので睡眠のしつけは早いほどよい。それによって多重な育児負担が軽減され、両親も良い睡眠が得られる。[KK HISAMA 2010.10]

第五回 よく眠り幸せな双子ちゃん: 後 編

Healthy Sleep Habits, Happy Twins: A Step-by-Step Program for Sleep-Training.
Marc Weissbluth, M.D. 2009
 
 出産直後は何が何でも眠りつづける赤ちゃんの睡眠時間や睡眠のパターンは次第に変化していく。生後3ヶ月は昼夜に関係なく頻繁な授乳が必要であるため夜間も継続した睡眠が得られない、この生物学的な理由については本シリーズ最初の著書で説明した。今回の著者では、睡眠のしつけはできる、それも早いほどよいという。空腹が満たされ、おむつもかわき、適宜な活動時間が経過してから一人で眠りにつけるかがしつけの重要な部分である。いつも大人が抱いてあやさないと眠らないのでは困る。
 まずは眠りのタイミングが重要である。赤ちゃんの眠そうな様子に気づくこと、これは生後の月日や個人差があるので一様ではない。一般に身体の動きが鈍り、眠そうな眼をする。しかし、眠くなると気むずかしく泣く子も多い。泣きすぎると手に負えなくなるが、3−5分ほど一定の間はそのままにしておくと眠る場合が少なくない。この際、毎回好きな動物のぬいぐるみをやると効果が大きい。待っても泣き止まないなら以下に述べた「眠りをさそう援助」をして、前よりも少し長くまつ。これを何回かくりかえす。この方法は覚醒時の刺激が過度でなかったとか夜間に有効である。
 次はお昼寝の習慣である。4ヶ月頃までは1−2時間も起きているともう眠いので、お昼寝をさせる。お昼寝の時間や回数は生後の日数とか、成長の個人差があるので一概に言えない。双子ちゃんの場合は授乳と睡眠時間を同じ時間にシンクロナイズする。まずは午前中のお昼寝を同じ時間にすることから始めるとよい。
 新しいことではないが、眠りをさそう援助を忘れない。よく行われている行動は、軽いゆれ、軽いタッチ、乳首、単純な音やメロディー、お風呂などがある。覚醒時の過度の刺激は神経を疲労させ、激しい泣き方を誘導するので禁物。
 興味深いのは著者が提案する眠りの記録表(スリープ・ロッグ)である。専業主婦の場合はそれほど必要ないかもしれないが、双子を出産して職業をもつママは子育ての協力者が必要である。協力者とのコミュニケーションや双子の睡眠をシンクロナイズするためにも役立つ。

スリープ・ロッグは縦に24時間が30分きざみで分割され、横は曜日が並ぶ。一日48ある升目は、睡眠・泣く・なだめる・覚醒(ベッド内)・覚醒(ベッド外)など、色分けして塗り睡眠パターンが一目でわかるようになっている。[KK HISAMA  2010.11]

第六回:元気なベビーを育てる:地球にやさしい妊娠・出産・子育てガイド 前 編

     Raising Baby Green: The Earth Friendly Guide to Pregnancy, Childbirth and Baby Care. By Alan Greene. John Wiley & Sons, Inc., 2007.      

 はしがき

    食材は「地産地消」、野菜は家庭菜園から等・・食の安全・安心が求められている。アメリカの都市でも、近隣の農家の人たちがやってきて虫も大好きな有機野菜の   直売でにぎわう。私が住んでいた地方の大学町では、週末に開かれるファーマーズマーケットが盛んだった。「グリーンベビー・運動」もこうした流れを反映する。キーワードは「グリーン(新鮮な、元気の良いなどの意味)」、有機野菜・食品による健康はもちろん、子孫のために森を残し、空気や土壌の清潔を保ち、野生の動植物を護るなど、よい自然環境を保持することの重要性を意味する。

 本書も前回と同じく国民的な人気を得ている小児科医を中心に執筆された。地球の未来を担うベビーたちの環境を護るために、妊娠・出産・子育てにおける重要な知識と具体的な方法を述べている。ひと昔前には考えもしなかったことが、環境汚染の時代を生きる母親たちにとっては命がけの課題となった。母親たちが妊娠を機に「グリーン」な子育てに関心をもてば、地球を護る原動力となる。有機野菜や穀物が中心であるが、有害な化学物質に関連して、おむつ、洗剤、空気汚染、身体の清潔、家屋内の清潔、よくある病気への対処法までに及ぶ。内容も妊娠・出産から乳幼児の育児まで幅広い。
読者は体内に侵入する発ガン物質が、胎児や乳幼児においては、大人の10倍の害があることを知っているだろうか。また、赤ちゃんのアレルギーは、妊娠中の食べ物に配慮して予防ができるという。移民によって構築されたアメリカ社会では、親や親族と離れて子育てする女性たちの知識、相互の助け合い、すなわち、横のつながりが深い社会が発達している。本書には資本主義社会の急速な進展による核家族、シングルや高齢者など、無縁社会における子育てに悩む日本の母親たちが参考にしたいことが多く書かれている。

 次回の中編では妊娠と出産において元気なベビーを育てる心がけについて、胎児の環境である子宮のグリーンについて述べる。出産と子育てのグリーンについては後編で述べる。[kkISAMA 2010.12]

第七回 元気なベビーを育てる:地球にやさしい妊娠・出産・子育てガイド 中 編

Raising Baby Green: The Earth Friendly Guide to Pregnancy, Childbirth and Baby Care. By Alan Greene. John Wiley & Sons, Inc., 2007. 
 

子宮内のグリーン

 
健康な赤ちゃんを育てる理想郷である子宮環境はすばらしく、学ぶほど自然の威力を感じる。残念ながらこの理想郷まで外界の汚染物質が侵入し、母体を通して胎児に到達しているのだ。眼に見えない有害物質が遺伝子へ及ぼす影響は広く知られるようになった。2004年の調査によると、胎児の臍帯における工業性化学物質は287種類、そのうち180種類は発ガン物質であるとされる。脳・神経障害など新たな病名の障害児が増加している。こうした事情を緩和するために、著者は健康な赤ちゃんのために妊娠中の母親ができることについて述べている。
妊婦の飲食物:興味深いアドバイスは喘息など小児に多いアレルギー性疾患は、妊娠中の食品の選択や、嗜好品・医薬品を制限することによって減少できることである。お魚や野菜・果物、ヨーグルトがよい。日本食は豆腐や納豆などの大豆食品が豊かである。また、たばこ、市販の鎮痛剤、ピーナツ、遺伝子組替えの食品は避け、有機食品を選択する。ソーセージのような加工食品や冷凍食品はできる限り使用しない。
婦の運動:運動はすべての人の健康に不可欠だが、妊婦の場合は出産に必要な体力を培い安産と速やかな回復に繋がるし、次のような妊娠中に起る危険な病気を予防できる。
(1) 糖尿病:妊娠中8人に1人の割合で糖尿病が起る。その治療に関する研究では、20
分間のエロビック(歩く、自転車など)がインスリンほどの治療効果があった。
(2) 子かん(癇)前症:蛋白尿・浮腫や高血圧症で未熟児出産の要因である。妊娠後期
に起りやすく医学的な治療は早期出産となる。毎日の散歩など軽い運動で予防できる。

 妊娠中の美容とアロマ:シャンプーから化粧品まで安全な商品がある。毛染めは有害なものが多く、胎児への影響は10倍にもなるので避ける。胎児はアロマに敏感で、食べ物の匂いなど家族に特有な匂いを好むようになるという。有害物質の臭いはカバーするのではなく、発生源をなくすこと。たばこは妊娠中の発育不全のみか、将来は喫煙者になる可能性が大きいので母親は禁煙、家族も屋内では自粛する。[KK.HISAMA. 2011.1]

第八回 元気なベビーを育てる:地球にやさしい妊娠・出産・子育てガイド 後 編

   Raising Baby Green: The Earth Friendly Guide to Pregnancy, Childbirth and Baby Care. By Alan Greene. John Wiley & Sons, Inc., 2007

   出産の準備・産室

 
 日本など東洋各国では出産直後のベビーケアを親や親族の女性に頼っているが、ヨーロッパでは出産と産後のケアをする専門職が発達している。貴族社会のイギリスでは昔からすぐれたマンスリーナースが行った。今では出産から産後のベビーケアを助けるドウラ (Doula) と呼ばれる女性たちによるヘルプがある。ドウラのおかげで帝王切開が50%減少、陣痛は短縮され、Pitocin の使用が70%減少された。都市で孤立する主婦のために、日本の助産婦はヘルパーさんと共同で訪問もかねた新たな役割を開拓できるのではないか。
 「産湯」の習慣があるが、ドクター・グリーンはお湯だけで洗うことを勧める。すなわち、ベビー用の化学物質を含まないシャンプーやソープを最初2−3日はさける。今ではベビーオイルやタルカンパウダーは時代の代物となり使われなくなった。母乳が理想的であるが、人工乳の場合は害の少ないボトルや乳首がある。すべてはインターネットで検索し注文できるので便利である。
 

  子育てガイド

 
 著書の半分以上は、子育てを項目に分けてに地球にやさしい環境の視点から述べている。
 保育室: 壁、フロア、家具、おむつ、服、おもちゃなど、赤ちゃんを囲む環境や身の回りのものについて述べている。フロアや家具は自然の木材、服やおもちゃも自然の素材がよい。赤ちゃんは何でもなめてしまうのでおもちゃや絵本は細心の注意を要する。常に地球にやさしいという視点を忘れないこと。
キッチン:哺乳に欠かせない水から、地球にやさしいキッチンのデザインまで広汎にわたる。大人と違って6カ月までは井戸水や水道水に含まれる硝酸塩(nitrate)が有害。
 浴 室:赤ちゃんは新陳代謝が激しいので体の清潔はこまめに行う。皮膚につけるすべての化学物質は体内で吸収されるので不要なものは使用しない。洗面所に保管する薬品や美容品も地球にやさしいものがよい。赤ちゃんが必要なビタミンDを必ず与える。
 お庭や公園:キーワードは「有機」、野菜やお花を有機栽培して自然な害虫駆除を行えば、蝶や昆虫が多く見られる。記念樹を植えると両方の成長が楽しい。
最後の章では屋内の空気、照明、節水、ペット、マイカーなど、地球にやさしい環境を促進するアイデアが満載されている。[K.HISAMA, 2011.3]
 

    

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