料理書が語るストーリー・大統領亡きあとのケネディ一家

料理書が語るストーリー・大統領亡きあとのケネディ一家

Cooking for Madam: Recipe and Reminiscences from the home of Jaqueline Kennedy Onasis.  by Marta Sgubin

 

はしがき

 就任後、わずか2年10カ月暗殺されたJFK。残された家族3人を支えたのはイタリア出身のマータ・スグビンさん。初めは幼い子どもたちのナニーとして、後に家族とゲストの家政婦兼料理長を務める。料理書のレシビは、毎日の食事の他に感謝祭やクリスマス、ゲスト・メニューなど、写真とストーリーと共に掲載されている。

 

未亡人となったジャクリンと幼児たち

 オープンカーの悲劇、喪服姿の夫人と二人の幼いこどもたちの姿・・・。料理書はその後の人生における、心温まる家族のストーリーである。

 最初は、ジャクリーン夫人の片腕となって、子育てを助けたのは母ブービエ夫人だった。間もなくフランスの高官の子どものナニーだったスグビンさんを知り、孫たちを託す人と考えていた。しかし、ヨーロッパ出身のスグビンさんを説得したのは、再婚した憶万長者オナシス氏だった。

 O氏は、ジャクリン夫人の悲しみを癒すチャーミングな人物の印象を受ける。彼は、暗殺の悪夢に襲われ、安全な要塞を求めたジャクリン夫人に、ギリシャの島とヨットを与えた。しかし、結婚後わずか五年で死去。原因は、長男の飛行機事故による不慮の死とされる。

 

料理書の誕生まで

 再婚したジャクリン夫人の住居は、フランス・ギリシャ・米国の各地の他に、ヨット上の生活まで。ヨットでは専任の料理人がいた。好奇心の強いスグビンさんは、そこで料理の基本を学び、後にニューヨークの住居で料理を始めた。

 本格的に料理したのは、O氏が亡くなり一家がアメリカに帰ってからだった。別荘地では家庭料理が一番。料理の腕前がめきめき上達した。出版社の編集者となったジャクリン夫人は、イラスト入りのお礼のことば送り、料理書を書くように勧めていた。

 しかし、本が出版されたのは、ジャクリン夫人の没後、子どもたちの懇願によって実現した。JFKジュニアによるまえがきがある。

 

思い出のレシピ

 チョコレート・ケーキ:O氏が生前、好物のケーキを食べたいという。困ったスグビーさんは、ケーキミックスで即席のケーキを作った。そのおいしさに感動したO氏は、沢山のケーキミックスを買ったと云う。

 レモンスフレ:本の表紙を飾る黄色のスフレはパーティで大人気。私が試したら数時間かかったが、写真のようにきれいで絶品だった。

 一家の悲劇の中で続く日々の営みがある。お料理は、どんな家族においても、五感から得られる最高の幸せであり続けるのだ。[KK.HISAMA,2019.1]

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