幸せを約束する歯科医療

幸せを約束する歯科医療

はしがき

 歯で噛むことの重要性については、すでに唾液の科学的研究によって明らかにされている。よい歯による咀嚼は食べる喜びを与えるだけではなく、生活習慣病や癌の予防に効果があることが、動物実践によって実証されている。美容にも大きな効果がある。それにもかかわらず、国民健康保険が始まってから半世紀近いのに、合わない入れ歯、前時代的な予防歯科による歯周病の蔓延など多くの課題を残したままだ。

 

予防歯科の文化ショック

 私が三○年に及ぶアメリカの生活から得た恩恵は何だったか、その一つがおいしい食事を生涯自分の歯で噛む喜びである。この喜びを生涯つづけたい、すべての日本人がこの喜びを知る日が来るように、それが私の切実な願いである。私の幸せな歯科医療は、オリンピック開催の年、歩き始めた長女と一緒に渡米した後に経験した文化ショックに始まった。それは、夫の親友が自宅で開催したパーティーに参加し、そこで一人の美しい女性と出会ったときだった。

 内気な私はパーティーでは文字どおりの「壁の花」、人だかりを離れて隅っこに立っていた。しばらくしてYさんが笑顔で近づいてきた。あいさつが終わると、「貴方の歯はとてもきれいね」と言う。日本で一度だって歯をほめられたことがなかった私は一瞬戸惑ったが、反射的に「サンキュウー」と答えた。この出来事によって、私はにわかに歯を意識するようになった。Yさんのフィアンセを紹介されたが、彼は口一杯に金具があり醜男に見えた。金具がクルマ一台の値段に近い歯の矯正装置であることなど、当時の私は毛頭知らなかった。

 

予防歯科の実践

 こうしてアメリカでは自然歯が美容の重要な条件であることを意識したが、毎日の歯磨き以外はどうするのか。母は三〇代の終わりに総入れ歯をしたので、私も年とったら入れ歯は当たり前と考えていた。そんな私が予防歯科の実際に紹介されたのは、Yさんに会ってから三年後、一家で東海岸のヴァージニア州から西海岸のオレゴン州に引越ししてからだった。当時は大学院の学生は社会人が多く、皆、妻子をもっていた。大学側は二世帯平屋(デュプレックス)を新築した。家の周りは手入れの行き届いた緑の芝生が広がり、子ども達は同年の友達とのびのびと遊んでいた。

 長女の親友はふわふわの金髪と青い目のカナダ人ハイディ、お母さんと共にきれいな歯並びをしていた。ある日、ハイディを近所の小児歯医者に予防のための検診に連れて行く、自分は大人によい歯医者に行ってクリーニングをしてもらうという。歯の健康において予防が如何に大事かを教えてくれた。

 

おわりに

 「なるほど」と考えた私は、ようやく予防歯科の方法がわかり、子どもによい歯医者のアポをとって長女を連れて行った。自分と夫は大人によい歯医者を紹介してもらった。この時から一家四人の歯の健康が保証され、娘達は生涯を全自然歯で過ごせる運命となった。

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