アルフレッド王の物語

アルフレッド王の物語

はしがき

 アルフレッド王(在位871-899)は「イギリス王」とも言われる有名な王である。イギリスが地方に分割していた時代の王様で、幕府の支配下にあった藩主のような存在。強力なスカンジナビアの海賊(ヴァイキング)が8世紀の末(793年)、イギリスの地方を次々に占領した頃、最後に残った王がアルフレッドだった。

 

英語の衰退と復活の歴史

 ヨーロッパで文字言語が最も早くから発達したのは英語だった。しかし、勝者となったヴァイキングは、彼らのことばを強要し、教会に保存されていた英語の書物や文書など全て焼き払った。アルフレットはゲリラ戦で国を守り貫いたが、貴重な英語の文書をすべて失ってしまった。

 「文字言語なくして精神文化はない」と考えたアルフレッド王は、文字を復活させるために一大決心。熱意とリーダーシップによって、ラテン語の書籍を英語に翻訳する大事業が始まった。やがて膨大な時間と努力が実り、「古い英語(Old English)」が復活。アルフレッド王が、後にイギリス王と言われる所以である。

 

300年「地下に埋もれた」英語

 物語はそこで終わらない。アルフレッド王の没後、フランスからやってきたウイリアムが王位を得て、徳川家康のようにイギリス全土を支配した。政府や教会のことばは、全てフランス語かラテン語に。フランス語が第一言語、第二言語はラテン語、英語はマイナー言語となった時代が三百年間も続いた。当時は交通・通信網が発達していなかったため、音声言語はスコットランドなど遠い地方や、庶民の間で受け継がれ、生活言語として発展を続けることができた。

 では三百年も「地下に埋もれた」英語が、公的言語となるまでどのように復活したのか。そこには、感染症のパンデミックと、人々の英語への強い愛着があったのである。[KK.HISAMA 2019.7]

文献:「アルフレッド王の物語」日本人の英語講座:明るい未来を拓く学習ガイド(p21)

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