小泉進次郎の「セクシー」スピーチから学ぶこと

小泉進次郎の「セクシー」スピーチから学ぶこと

はしがき

 昨年9月下旬、環境大臣に就任して間もない小泉進次郎が、ニューヨークにある国連のClimate Action Summit に出席し、前夜に会見を行った。そのとき、スピーチのキーワード[fun, cool, sexy]の中の一個がメディアに批判された。実は‘sexy’ は彼の卓越した話術の実例であり、メディアの方が間違っているらしい。

 

日本のメディア vs 小泉の機転

 話題となった‘sexy’ 発言は、隣に座っていた前事務長(女性)のことばを引用したもので、‘attractive’ とか ’interesting’の意味がある。動画を見ると小泉は ’fun’ と ‘cool’のフレーズを発音したときは前方を向き、’sexy’ の発音では女性の方に向きを変えた。問題は、会話の文法が悪いために、’sexy’に託したメッセージうまく伝わらなかったことだ。

 文法の本家本元は音声言語にあり、文字言語の文法は二次的かつ限定的である。音声の文法を知らないと、弱く発音される機能語(内容語以外の単語)や ‘s’ などは聞きとれない。そのため話すときは、平気でオミットする。何とか理解しようと想像力を働かせる聞き手は、神経が疲れてしまう。

 

小泉の英語スピーチにおける文法問題

 メディアの非を批判するなら、もっと重要な問題に触れてほしかった。相手に正しく伝えるためには文法が命である。話題になった部分のスピーチを活字にすると:

[小泉文章] It gotta be fun, it gotta be cool, you gotta be sexy, too
[訂正文章] It has to be fun, it has to be cool, it has to be sexy, too
[訂正短縮] It’s to be fun, it’s to be cool, it’s to be sexy, too

 単語 ’sexy’ が輝く文章は:to convince other people about that、“we have to make it fun, we have to make it cool, we have to make it sexy as well.”[拍手喝采!]

 小泉は弱く発音される機能語を習慣的にオミットしている。例えば、スピーチの冒頭で、「重要なこと」が 「‘Japan keep time’ 」と発言、意味不明のため皆が首をかしげた。一国の大臣が人々に環境問題の重要性をアピールするスピーチは、正しい文法と意味が通じる文章がほしい。

 

おわりに

 小泉は、渡米して大学院と政治機関で3年間猛勉強。世界中の留学生とデスカッションしたという。自信たっぷりのアドリブのスピーチもできる。しかし、音声言語の文法を重視しない学校教育の「刻印」が消えない。負の刻印をさけるための重要なアドバイスがある。

 海外居住について:会話は新しい語や表現を学ぶ手段ではなく、すでに覚えていることを再現する練習である。自国でその言語の基礎を十分に習得することなく外国に居住することは明らかに有害である。なぜなら、必要にせまられとっさの思いつきで誤った表現で間に合わせ、繰り返すと修正できなくなるからだ(ヘンリー・スウィート)。

 鉄則は「正しい文法ファースト」で、フレーズ・文章を反復する。音声言語文法の基礎は、音素の発音とことばの音楽の記憶から始まる。[KK.HISAMA, 2020.3]

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