第7回 ナイチンゲールに学ぶ感染症との闘い

第7回 ナイチンゲールに学ぶ感染症との闘い

輝き続けるナイチンゲールの威光

はじめに

ナイチンゲール生誕200年記念事業を企画してから3年が過ぎた。残念ながら、この記念の年は、新コロナによって多くのイベントが中止となった。本研究所による記念事業もWEBで展開する。第一弾は、感染病と戦った「クリミアの天使」の生涯のストーリー「フローレンス・ナイチンゲール:愛に支えられた生涯と偉業」である。ストーリーと並行して、学術セミナーでは「ナイチンゲールに学ぶ感染症との闘い」をシリーズで掲載する。

高度医療とナイチンゲール

 私がアメリカの病院で働いた最初のユニットは、重症患者を治療するICUだった。日本でICUなど聞いたことがない時代、アメリカでは人工呼吸器はもちろん、心電図のモニターなどの機器があふれ、自信に満ちたナースたちが忙しく働いていた。

今年の12月、看護の大学教育を進めてきた日本看護科学学会は、40回目の学術集会を開催、すべてオンラインで行われた。二日間、数えきれないセミナーや研究発表があった。私が注目したのは、ICUで急性脳症の治療を受けた事例だった。

患者はICUで高度医療を受けてから、一般病棟で通常の医療を、退院後は自宅で在宅医療を受けている。ICUでは、脳細胞にダメージを与える症状の発生と回復の過程が脳波の変化としてわかる。発表者は、脳波を観察している間に、症状の発生や予防においてナイチンゲールが発見した「自然の法則」=「看護の法則」が重要であると気づいたのだ。

ナイチンゲールによる自然の法則の実践

感染病が蔓延したヴィクトリア時代(1837-1901)に戻ろう。ナイチンゲールは大家族の中で、病気の快復過程を観察している間に「自然の法則」を発見した。家族の反対の中で、看護への道を歩んだナイチンゲールは、この法則を婦人病院で(1853-54)実践し、続くクリミア戦争(1853-56)における実践では、統計学により見事な成果を世に示した。時代は細菌さえも発見されない医療の黎明期である。

ライフワークとした衛生改革

クリミア戦争の後、ナイチンゲールは衛生改革による感染症の予防に尽力した。最初の5年間は、英国軍の衛生改革に取り組み『病院覚え書』(初版:1859)を出版。市民の衛生改革は家庭から始まると考えたナイチンゲールは、同年12月に一般市民を読者とする『看護覚え書』を出版した。どちらもベストセラーとなった。

『看護覚え書』では、自らが経験した事例で「自然の法則」を「健康の法則」=「看護の法則」として説明している。ユーモアにあふれる内容は、読んで楽しい。ナイチンゲールが発見した自然の法則は、看護教育の基礎となった。生誕から200年を経た今も、自然の法則は看護教育で学ばれ、ICUで、病棟で、家庭で、すべての病気の快復と予防の基本となっている。[KK.HISAMA, 2020.12]

次回からは、ナイチンゲールが発見した「自然の法則」をやさしくひもといていく。

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