第5回 サピエンス勝利の歴史と危機・科学革命(その2)

第5回 サピエンス勝利の歴史と危機・科学革命(その2)

はしがき

 認知革命(7万年前)、農業革命(1万年前)を経て、科学革命(500年前)に至ったサピエンス勝利の歴史は、必然的に他の生物(動物・植物)の減少か滅亡、サピエンスとサピエンスの食料となる動植物の圧倒的な増加だった。

前回は自然の摂理を超えるサピエンスの摂理、そしてサピエンスを支配するAIの未来について述べた。今回は過去500年の科学革命と経済発展(economic growth)の密接な関係と、地球の支配者(神)となったサピエンスの未来を考察する。

経済発展と科学革命の密接な関係

資本主義を支える経済発展は、生産と消費の拡大にかかっている。生産は資源とエネルギーを必要とする。土地の争いは農業革命に始まり、やがて民族の安全を守る国家が発達した。民族の争いは、国家間の戦争へ、国家が連携する世界戦争へと拡大していく。

科学革命では、国家の存続をかけた戦争と、更なる知識の拡大・実用化が進む。コロンブスの新大陸発見に始まる大航海時代へ、植民地獲得の覇者となったイギリスで工業革命が起こった。機械農業に始まった工業革命は、自然エネルギーの変換(蒸気・18C末)を経て、核エネルギーの実用化(兵器・20C)を実現した。原爆の使用で世界戦争が終った。

その後、核兵器の大国となった米ソ対立の中で、地下に埋蔵する石油から自然に頼らない物資の生産(繊維・プラスチック等)に成功した。科学が可能にした物質の生産と消費は、世界の文化と生活様式を一変した(個人主義・自由)。ロケットの発射に続く航空機の発達は、グローバル時代を加速し更なる経済発展をもたらした。

科学革命における経済危機

知識を実用化する科学研究は莫大な費用を必要とする。コロンブスの三隻の航海は、スペイン女王が費用を調達した。核の時代における科学の発達が、より早く、より高度になった陰にはマネーの変化がある。

不況の中、ニクソン政権下に起こった米ドルの金交換停止(1971.8)。紙幣はいくらでも印刷する紙切れとなり信頼に頼るだけである。景気の変動による不況・失業は、政府の介入(資金の投入)を必要とする。リーマンショック(2008.9)は、巨額の資金投入により経済恐慌の寸前ですくわれた。

結 語:サピエンスの未来

 リーマンショックから10年を経て新コロナショックが起こった。ワクチンや治療薬など科学による解決が期待される。科学の力で更なる生産と消費の拡大も、他の惑星へ移住も可能という。一介の動物から神となったサピエンスは、今、重要な岐路に立っている。

マーケットにあふれる食料、都市を埋め尽くすビル街、ショッピングセンター、これらが象徴する豊かな社会の対価は何か。それはサピエンスが家畜とする動物の感情、そして自身の感情 (家族・コミュニティのつながり)ではないか。『サピエンス全史』の著者は「幸せとはなにか」と問う。その答えは、歴史の中に発見できるという。読者への宿題である。[KK.HISAMA,2020.8]

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